ドイツで10月1日からガス賦課金導入、価格高騰分を消費者に転嫁

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

デュッセルドルフ発

2022年08月12日

ドイツ連邦政府は84日、天然ガスの追加費用の一時的な価格転嫁に関する政令を閣議決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。88日に官報で公布し、翌9日から施行された。

同政令は第2次改正エネルギー確保法(2022年7月29日記事参照)に基づくもの。これまでは一部のガス輸入事業者がガス価格高騰やロシア産天然ガス不足による追加調達費用を負担していたが、101日以降は賦課金を通じて需要家への価格転嫁が可能となる。

この背景には、ロシア産天然ガス供給量の急激な減少にある。ガス輸入事業者はドイツ国内のエネルギー供給事業者に納入義務があるため、ロシア産天然ガスの不足分を追加調達する必要がある。一方、追加調達にかかった費用は、顧客との契約上、価格転嫁できなかった。その結果、ガス輸入事業者の財務状況が悪化して経営破綻し、ガス供給の停止や倒産の連鎖の原因となる可能性があった。既にエネルギー大手ユニパーも財務状況が悪化し、政府が支援を決定している(202282日記事参照)。

今回施行した政令により、ガス輸入事業者の経営破綻やそれに伴うエネルギー産業のサプライチェーンの混乱回避や、安定供給の確保を目指す。

価格転嫁は具体的には、まず直接的にガス価格高騰やロシア産天然ガスの輸入減による追加負担の影響を受けたガス輸入事業者が813日中にトレーディング・ハブ・ヨーロッパ(THE、注)に対し、ガスの輸入コスト増加などに関する見通しを回答する。THEはそれを踏まえ、ガス価格への賦課金を算出し、815日に発表する予定。転嫁は3カ月ごとに調整が可能で、追加費用の価格による。

政府の試算によると、年間で1キロワット時当たり約1.55セントの費用が加算される。 101日から賦課金を反映したガス価格がガス供給事業者を経由して企業や一般消費者に請求されることになる。

ガス輸入事業者は930日までは追加でかかった調達費用を100%負担するが、101日以降は追加費用の最大90%が賦課金によって払われる。この制度は101日~202441日の時限的な措置だ。また、仮にロシアが契約上保証されたガス供給量を再度完全に供給した場合、賦課金はゼロとなる。

政府は、負担が大きくなる一般家庭や産業に対して、さらなる支援を予定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

(注)ドイツ国内の全てのガスパイプライン事業者11社が20216月に共同で設立した法人。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

ビジネス短信 7e87df926e7f4977