10月に前倒し議会選を実施、暫定政府はガス供給確保を急ぐ

(ブルガリア)

ウィーン発

2022年08月15日

ブルガリアのルメン・ラデフ大統領は81日、国民議会を翌2日に解散し、暫定政府を指名、10月2日に前倒し総選挙を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。20211213日に発足した連立政権(2021年12月21日記事参照)に対する不信任案の可決と、キリル・ペトコフ首相辞任の後、各党党首による組閣の失敗を受けたものと報じられている。20214月以降4回目の議会選挙になる。

反汚職を掲げる右派・左派の4党によって202112月に発足したペトコフ内閣への国民の期待は高かったが、新型コロナウイルス禍への対応や、ロシアのウクライナ侵攻、エネルギー危機、インフレ対応に追われ、大きな成果を残せなかった。在ブルガリア日本大使館の「ブルガリア月報(20226月)」によると、前回選挙で第5党になったポピュリストの「こんな国民もいる(TISP)」は68日、北マケドニア問題(同国のEU加盟交渉開始に対するブルガリアの拒否権撤回)と政府の予算配分に対する不満を理由に連立政権を離脱し、同月22日に野党GERBUDF連合(注)が提出した政府不信任決議案に賛成した。

ウィーン比較経済研究所のブルガリア専門家のルーメン・ドブリンスキー氏は810日、ジェトロの取材に回答。同氏は、ぺトコフ前首相率いる「私たちは変化を続ける(PP)」が中道から右傾化したことで左派の有権者の支持を失うことが予想される中、10月の総選挙ではボイコ・ボリソフ元首相率いるGERBが第1党になる可能性が高いとの見解を示した。ただし、前倒し選挙が繰り返される中、国民の政治への信頼も投票する意欲も低下しているとし、低い投票率によって予想外の結果につながる可能性もあると添えた。

天然ガスの確保が最大の課題

選挙までの暫定政府の主な課題は、冬に備えたエネルギー供給の確保だ。親EU・反ロシアのペトコフ前首相は就任以降、エネルギー供給を多様化することによってロシアへの依存度を下げようとした(2022年5月9日記事参照)。ブルガリアがロシア通貨ルーブルでの支払いを拒否したため、ロシアは4月から天然ガスの供給を停止した。現在、ガス供給が9月までしか確保されていないため、暫定政府のガラブ・ドネフ首相は83日に、エネルギー緊急対策本部設立を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。記者会見でドネフ首相は国民と企業に対して、暫定政府がエネルギー供給の安定や、エネルギー価格の見通し、暖房の使用期間が終わるまでのガス供給確保のために全力を尽くすことを約束した。エネルギー省は翌4日、液化天然ガス(LNG)購入の入札を発表予定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと明らかにした。

(注)「ブルガリアの欧州における発展のための市民(GERB)」と民主勢力同盟(UDF)連合

(ブラティミール・カネフ、エッカート・デアシュミット)

(ブルガリア)

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