ボルソナーロ大統領、次期大統領選に向けマニフェスト発表

(ブラジル)

サンパウロ発

2022年08月30日

ブラジルの高等選挙裁判所(TSE)は89日、102日に行われる大統領選挙における候補者12人のマニフェストを外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。

現職大統領のジャイール・ボルソナーロ候補のマニフェストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、4つの大項目に分かれ、合計48ページで構成されている。第3項の「政府計画」には、「経済、テクノロジー、イノベーション」「物流インフラ」「環境の持続可能性」などの分野について詳細に記載されている。「経済、テクノロジー、イノベーション」では以下を掲げ、安定的な経済成長を目指すとしている。

  • 財政再建による経済の安定と持続可能性の追求
  • 国営企業の民営化などを行い、国家の役割を必要不可欠な活動へ集中させる
  • 税率の削減および税制度の簡素化
  • 中長期的な公的債務の削減
  • インフォーマルセクターの縮小
  • 若者や女性の雇用創出
  • デジタル経済推進の観点からスタートアップ企業やベンチャーキャピタルを支援

ボルソナーロ候補は、自身が再選した暁にはパウロ・ゲデス経済相を引き続き起用する意向を示しており(現地紙「カナル・アグロ+」66日)、ゲデス経済相もボルソナーロ氏の側近として政権に関わる意向を示している(現地紙「フォーリャ」817日)。こうしたことから、ボルソナーロ氏が再選した際は、経済政策は現在の方針がおおむね踏襲されるとみられる。

「物流インフラ」については、複数産業に関わるものとして、「ブラジルコストにつながる存在であってはならない」旨が記載されている。具体的には、港湾や空港、高速道路の民営化に加え、生活インフラの視点から公営電力企業エレトロブラスの民営化を引き合いに出し(2021年7月27日記事参照)、同社の民営化によって得られる歳入で消費者の電力料金の引き下げを行うことや、電力業界に自由な競争を生むことでさらなる投資誘致を目指す。

国有企業などの民営化については、「政府が公共政策に集中することにつながる」と説明している。なお、野党で労働者党所属のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ候補のマニフェストでは、エレトロブラスを含め、国営石油会社ペトロブラスやブラジル郵便電信公社などの民営化には「反対する」と述べており、ボルソナーロ氏の国営企業に対する考え方との違いが明確だ。

「環境の持続可能性」については、持続可能な投資として、グリーンボンドを活用することやカーボンクレジットの活用などが記載され、違法な森林伐採、火災、環境犯罪の制御・監視を強化する。

外交政策は、各種世論調査でリードしているルーラ氏と(2022年7月5日記事参照)ボルソナーロ氏のマニフェストと比較すると、ルーラ氏は中南米諸国とアフリカ諸国の南南協力(注2)を挙げたほか、地域統合の開発を促進する目的で中南米およびカリブ地域の統合に着手することや、メルコスール、南米諸国連合(UNASUR)、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)、BRICSを再び強化することなどに触れている。一方、ボルソナーロ氏は、OECD加盟を含め、IMFWTOなど国際機関への参画について言及しているほか、新たな貿易パートナーを歓迎し、国家の発展に資する市場や投資元を世界で模索する、との内容になっている。

(注1)候補者12人のマニフェストは、高等選挙裁判所(TSE)の公式サイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公開されている。各候補者の氏名をクリックした後、画面右に表れる「Proposta de Governo」をクリックすると、各候補者のマニフェストが閲覧できる。

(注2)開発における途上国間支援のことを指す。

(古木勇生)

(ブラジル)

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