米商務省、半導体関連技術などを輸出管理対象に追加、「ワッセナー・アレンジメント」での合意を反映
(米国)
ニューヨーク発
2022年08月15日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は8月14日、輸出管理規則(EAR)の内容を一部改定すると発表した。ワッセナー・アレンジメント(WA)の2021年総会で合意された内容に基づき、半導体関連の技術などを輸出管理対象に加える。正式には8月15日付の官報で公示する。規則改定は一部を除き、官報公示日に有効となる。
WAは、通常兵器や関連汎用(はんよう)品・技術の過度の蓄積を防止することで、国際社会の安全に寄与することを目的とする、国際的な輸出管理枠組み。現在は、米国を含む42カ国が参加している。WAの年次総会での合意事項について、加盟国は可及的速やかに国内規則に反映することが求められる。BISは今回、2021年12月に開催されたWA総会の合意内容に関して、その一部をEARの規制品目リスト(CCL)
に反映した。
具体的には、WAで特定した4つの技術を輸出管理対象に加える。概要は次のとおり。
- ウルトラワイドバンドギャップ半導体の製造に使用される2種類の基質〔酸化ガリウム(Ga2O3)とダイヤモンド〕:CCLの輸出管理分類番号(ECCN)の3C001に各基質に対応するパラグラフeとfを追加。それに伴い、同3C005、3C001c、3C006、3E003を一部改定。
- GAAFET(注1)搭載の集積回路(IC)開発に使用される電子コンピューター支援設計(ECAD)用ソフトウエア:新たなECCNとして3D006を追加。本規則改定のみ、施行日は官報公示日から60日後の10月14日となる。BISは、同技術の輸出管理の実施に当たり、パブリックコメントを9月14日まで募集する(注2)。特に、GAAFET回路の設計に適したECADの特徴や輸出許可要件の範囲などについて意見を集める。
- 圧力利得燃焼(PGC)技術:ECCNの9E003に新たなパラグラフとしてa.2.eを追加。
BISは、WAでの合意内容のうち、これら4つの技術は2018年に成立した輸出管理改革法(ECRA)で特定が求められている新興・基盤的技術(「1758条の技術」、注3)の要件を満たすと説明。米国の国家安全保障にとって重要であるため、その他の合意内容に先んじて早期に輸出管理の実施が必要としている。合意内容の残りの部分については、別途、規則を発表する予定だ。
(注1)GAAはGate-All-Around(全周ゲート)の略で、トランジスタの次世代構造を指す。この構造を持つトランジスタがGAAFET。
(注2)連邦政府ポータルサイト(ID:BIS-2022-0006)へのオンライン提出が可能。
(注3)BISは5月、ECRAの1758条で特定が義務付けられている「新興技術」と「基盤的技術」について、今後の規則策定に当たっては各技術を区別せず、全て「1758条の技術」として表すとの方針を表明した(2022年5月24日記事参照)。
(甲斐野裕之)
(米国)
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