米自動車業界、上院の半導体補助金法案可決を歓迎

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月02日

主要自動車メーカーを代表する米国自動車イノベーション協会(AAI、注1)のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は727日、米国連邦議会上院が同日に国内半導体産業向けの補助金を含む「CHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法案(H.R.4346外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を可決したことを受け(2022年7月28日記事参照)、賞賛の意を表する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同氏は「CHIPSプラス法案は、来るべき次の問題に備えて主要なサプライチェーンを準備することを目的としている。ますますデジタル化された今日のコネクテッド車両の計算能力を考えると、国内の半導体製造に向けた今回の超党派による可決は、将来への賢明な投資だ」と述べ、上院の決定を歓迎している。

自動車業界では、半導体チップ不足を受けて、多くのメーカーが在庫不足に陥っている。2021年に半導体不足が原因で生産計画を達成できなかった車両台数は、北米全体(注2)で2019年の生産実績の13%強に当たる216万台に上った(2022年5月27日記事参照)。生産台数の減少傾向は2022年に入っても続いており、6月時点で全米の平均在庫日数(注3)は28日と、適正日数といわれる60日を大きく下回っている。また、ゼネラルモーターズ(GM)は、トラックやスポーツ用多目的車(SUV)を中心に、半導体など部品の入荷を待っている未完成車が726日時点で9万台以上存在すると発表した。このうち数千台は、生産拠点のあるミシガン州に置かれたままで、半導体不足の影響は深刻だ(ロイター728日)。こうした中、GMやトヨタを含む主要自動車メーカー幹部らは622日、連邦議会に対して、同法案の早期成立など半導体生産支援に向けた迅速な資金提供を要請していた(2022年6月24日記事参照)。

同法案が成立すれば、産業界向けに527億ドルの予算が充当されることになるが、そのうち20億ドルは自動車産業用を含む旧世代の「レガシー半導体」の生産に対する補助金として充てられる。米国自動車部品製造者工業会(OESA)のジュリー・フリーム会長兼最高経営責任者(CEO)は「半導体技術の国内生産を支援するための専用資金は、自動車産業、特にサプライチェーンにより大きな競争力を与えるだろう」と述べる一方、半導体製造工場の建設には少なくとも2年を要するため、供給の問題が完全に緩和されるまでには時間がかかるとの懸念も示した(オートモーティブニュース7月27外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(注120201月に、GMなどの米系メーカーやトヨタなどをメンバーとする米国自動車工業会(AAM)と、ホンダや現代自動車など外資系メーカーをメンバーとするグローバル・オートメーカーズが統合。加盟メーカーが全米の自動車生産台数に占める割合は99%。

(注2)米国、カナダ、メキシコ。

(注3)在庫車両数を供給日数に換算。

(大原典子)

(米国)

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