シンガポール政府系GIC、ブラジル投資ファンドへ447億円規模の出資発表

(ブラジル、シンガポール、メルコスール)

米州課

2021年10月11日

シンガポールのブラジル向け投資が増加している。9月14日付のブラジル現地紙「バロール」によると、シンガポール政府系投資ファンドGICは、ブラジル最大規模の投資会社BTGパクチュアルに対し、22億レアル(約446億6,000万円、1レアル=約20.3円)を出資する。BTGパクチュアルは、ブラジル通信大手オイが42.1%の株式を取得する光ファイバーインフラ事業者V.talの57.9%の株式を保有しているが、同紙報道によると、GICは今回の出資でV.talの取締役ポストの権利を得る(注1)。

GICは2017年にもブラジルの通信事業者アルガ―・テレコムの25%の株式を取得しているほか、2021年1月にはブラジルを代表するフィンテック大手のヌーバンクに対し4億ドルの出資を発表している。

同じくシンガポール政府系投資ファンドのテマセク・ホールディングスも2020年12月、ブラジルの決済事業者コンダクターに2,000万ドルを出資すると発表した。コンダクターは主にフィンテック向けに支払い処理サービスの提供やクレジットカードの発行などを行っており、米国決済大手のビザなども出資している。

ブラジル中央銀行によると、2020年のシンガポールからのブラジル向け直接投資額は7億8,200万ドルで、前年比4.9倍ほど増加した(添付資料表参照)。これは2012年の9億9,900万ドルに次ぐ規模だ(注2)。

シンガポール企業の対ブラジル投資はほかにも、ブラジル大手デベロッパーで不動産事業も手掛けるビタコンが2017年、アジア最大規模でシンガポールに本社を置く不動産会社キャピタランドと業務提携を行い、サンパウロ州を中心にサービスレジデンスを運営している。

ブラジルが加盟する関税同盟メルコスールは、2019年からシンガポールと自由貿易協定(FTA)交渉を行っており、2022年上半期の交渉妥結を目指している(2021年10月5日記事参照)。

(注1)GICによるV.tal株式取得の可否は、ブラジル電気通信庁(ANATEL)などによる審査を経て決定する。

(注2)ブラジル中銀が現時点で対内直接投資統計を公表しているのは2001年からのため、同年以降の投資額が対象。

(辻本希世)

(ブラジル、シンガポール、メルコスール)

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