改正雇用法9月1日施行、一部事項除き月給にかかわらず全従業員が対象に

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年08月23日

マレーシア政府は8月15日、1955年雇用法PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の第1付則を改定する省令を官報に公示した。省令では、改正雇用法が9月1日に施行されることと、一部の条項を除いて全ての従業員が同法の対象となることを規定している(雇用法の第1付則を改定する省令PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。同省令は、雇用法第2条(2)に基づく人的資源相の権限により、改正雇用法と同日の9月1日に発効する。

同国では2022年3月、46条から成る雇用法改正案が連邦議会で可決され、5月に公示された(1955年雇用法を改正する2022年法令A1651号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。週の労働時間上限48時間から45時間への短縮(注1)や、月の一部のみ勤務した従業員の給与計算方法、産休の延長、既婚男性従業員に対する育児休暇の付与、フレックス制度の運用、雇用法違反に課する罰金の引き上げなどを盛り込んでいる(2022年6月8日記事参照)。

法案成立後から、雇用法の対象範囲の変更には高い関心が寄せられていた。現行雇用法で対象となるのは、賃金が月額2,000リンギ(約6万円、1リンギ=約30円)を超えない者や、肉体労働従事者、家事労働者など。今回の付則改定により、雇用法の対象は月給にかかわらず全ての従業員に拡大される。

一方で、残業手当や解雇手当などに関する一部条項は、月給4,000リンギ(注2)を超える従業員には適用されない。具体的には、1955年雇用法の第60条(3)(休日出勤手当)、第60条A(3)(時間外手当)、第60条C(2A)(交代勤務手当)、第60条D(3)(公休日の時間外手当)、第60条D(4)(半日労働日の時間外手当)、第60条J(解雇給付、一時解雇手当および退職金)が適用除外となる条項だ(添付資料参照)。

例えば、変更後の第1付則に基づくと、第60条A(3)の適用除外に従い、月給4,000リンギを超える従業員には残業代を支給する必要はない。一方で、雇用法第7条Aは、同法が保障するよりも良い待遇を妨げるものではないと規定しているため、既に残業代を受け取っている従業員については、月給4,000リンギを超えていても、引き続き支給を受ける権利がある。

企業は、既存の雇用契約や従業規則が改正雇用法に準拠しているかどうかを引き続き確認することが重要だ。雇用法第7条に基づき、同法に抵触する規則は自動的に無効化する。

(注1)残業時間は法定労働時間(45時間)にカウントされない。45時間を超えた場合は、残業代を支払う必要がある。残業時間の上限は月104時間。

(注2)労働の対価として労働者に現金で支払われる基本給とその他手当を指す。雇用法第2条(1)と第1付則第3条の「賃金(wages)」の定義上、明示的に除外される住宅費や賞与、交通費、時間外手当などは含まない。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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