雇用法改正、施行に向けて準備を

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年06月08日

ジェトロは5月31日、1955年雇用法の改正に関し、主なポイントと留意点につき解説するウェブセミナーを開催した。マレーシアでは2022年3月、46条から成る雇用法改正案(添付資料参照)が連邦議会で可決された。講師を務めたジェトロのプラットフォーム・コーディネーター、ジョセフィン・ング・ビー・レン弁護士は、2012年以来となる今回の大規模改正は、ILO基準や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)労働章などの国際基準に適合させるために行われたと説明。

法案成立後から特に高い関心を集めていたのが、雇用法の対象範囲が拡大されるか否かという点だ。現行雇用法では、対象となるのは原則として、賃金が月額2,000リンギ(約5万9,000円、1リンギ=約29.5円)を超えない者や、肉体労働に従事する者、家事労働者など。ただし、雇用法を管轄する人的資源省は「改正法の施行と同時に、適用範囲を定めた付則を改正する省令も施行する」としている。こうした報道のほか、産休やセクシャルハラスメントに関する条項から、雇用法の対象でない者への保護を規定した文言が削除されたことを受け、「付則を改正するに当たり、重複が生じないようにするため」(ジョセフィン弁護士)、適用範囲は拡大する公算が大きいと述べた。ただ、「適用範囲の拡大は、産休や差別、強制労働など、一部項目に限定される可能性もある」と指摘した。

セミナーで逐条解説を行ったのは、月の一部のみ勤務した従業員の給与の計算方法、産休の60日間から98日間への延長、妊娠中の女性従業員に対する解雇制限、既婚男性従業員に対する7日間の育児休暇付与、週の労働時間上限の48時間から45時間への短縮、60日間の有給入院休暇の付与、外国人労働者を雇用する場合の事前承認の取得と解雇時の労働局長への通告、フレックス制度の運用、差別紛争の処理、セクシャルハラスメントに関する通告の掲示、強制労働に対する罰則規定の導入、一定条件下における従業員であることの推定、雇用法違反にかかる罰金の引き上げ、など。

昨今の勤務体制柔軟化を受け、フレックスタイム制度や在宅勤務に関する質問が多く寄せられた。ジョセフィン弁護士は、「出勤する人と在宅勤務者の間で待遇に差をつければ、改正雇用法で禁じられる『差別』に該当する可能性がある」と注意喚起した。差別の定義が雇用法上存在しないため、あらゆる形態の差別(人種、性別、年齢、障害、学歴など)が該当する場合があり、適用範囲は紛争を調査する労働局長の裁量に委ねられる。

改正法の施行日は未定だが、間もなく発効が見込まれる。ジョセフィン弁護士は企業に対し、就業規則の見直しなどを必要に応じて早めに進めるよう呼びかけた。規則の修正を行わなければ、雇用法第7条に基づき、改正法に抵触する条項はすべて自動的に無効化するため留意が必要だ。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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