2022年のGDP成長率予測の上値を引き下げ

(シンガポール)

シンガポール発

2022年08月15日

シンガポール貿易産業省(MTI)は811日、2022年通年の実質GDP成長率予測を前年比3.0~4.0%へと修正したと外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。MTI202111月以降、3.05.0%と予測していたところ、20225月の発表時点で、外需見通しが弱含んでいるため、予測値の上限を引き下げる可能性を指摘していた(2022年5月30日記事参照)。

今回の発表によると、2022年第2四半期の実質GDP成長率(改定値)が前年同期比4.4%で、第1四半期(3.8%)から加速した。一方で、季節調整済み前期比はマイナス0.2%で、2021年第2四半期以降初めてマイナスに転じた。

また、MTIは「世界経済環境は5月以降、さらに弱まった」と指摘した。外需見通しが3カ月前と比較して弱くなっているなどとした上で、「シンガポールにおける一部の対外志向の産業の見通しが弱くなっている」とした。一例として、石油・化学製品の主要市場である中国の経済見通しの弱さが、シンガポールの化学産業、燃料・化学卸売業の成長見通しにもマイナスの影響を及ぼしている点を挙げた。また、主要国・地域の経済減速が予想されるため、海運業や金融・保険業の成長も鈍化することを見込んだ。

他方で、国内および国境の規制がほぼ全て撤廃され、「コロナウイルスとの共存」に移行した結果、パンデミックによって大きな影響を受けた業種がシンガポール経済の回復を支えたとの見解を示した。特に、新型コロナウイルスのワクチン接種完了を条件に隔離なしの入国が認められたことから、チャンギ空港の航空旅客数やシンガポールへの外国人観光客数が予想以上に回復しているとした。

MTIは、航空旅客数と外国人旅行客数の大幅な回復が、航空輸送や芸術・娯楽・レクリエーションなどの航空・観光関連分野や、飲食サービスなどの顧客対応関連分野に恩恵をもたらすとの見方を示した。また、シンガポールへの渡航制限が緩和されたことで、コンサルタント会社や法律事務所などの専門サービス業が、海外の顧客とより密接な関係を築けるようになり、回復を後押ししているとした。

(朝倉啓介)

(シンガポール)

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