シンガポールの2022年第1四半期GDP成長率3.7%、外部環境の見通しが悪化

(シンガポール)

シンガポール発

2022年05月30日

シンガポール貿易産業省(MTI)は5月25日、2022年第1四半期(1~3月)のGDP成長率(改定値)を発表した。前年同期比3.7%と、2021年第4四半期の6.1%から減速した。速報値で発表していた3.4%から上方修正したものの(2022年4月15日記事参照)、前期比では年率0.7%と、2021年第4四半期の2.3%から成長幅が縮小した。

MTIは今回、2022年通年のGDP成長率予測「前年比3.0~5.0%」を維持した。ただし、同年のGDP成長率が「予測幅の下半分(3.0~4.0%)となる見通しが強まった」と述べた。同省はその理由として、3カ月前と比較して外部需要の見通しが弱含むとともに、国際経済の下落リスクが依然強いと説明した。MTIは、国内の石油、化学製品の主要市場である中国の経済が減速すれば、シンガポールの化学と卸売取引分野の化学・燃料部門の成長見通しに打撃を与える可能性を指摘。また、世界各国における物流の混乱の長期化と港の混雑が、海上輸送の成長を押し下げるとしている。

しかし、同省は見通しが堅調な分野として、エレクトロニクス部門が、5G(第5世代移動通信システム)や自動車、クラウド、データセンターの半導体需要に支えられ、当初の予想よりも成長が予想されると述べた。また、国内と近隣諸国の水際対策の緩和により、コンサルタントや法律など専門サービスや、航空・観光関連サービス、小売り、飲食サービスの回復を加速させるとしている。さらに、外国人労働者への依存が高い建設分野の労働力不足が緩和するとの見方を示した。

2022年の貿易総額、非石油部門の輸出の予測を上方修正

一方、MTI管轄下の産業・貿易振興機関「エンタープライズ・シンガポール(ESG)」は同日、2022年第1四半期の貿易総額と非石油部門の輸出が当初の見込みよりも好調だったと指摘。2022年通年の貿易総額の予測を、これまでの「前年比0~2.0%増」から、「8.0~10.0%増」へと大幅に上方修正した。また、非石油輸出の予測も、これまでの「0~2.0%増」から「3.0~5.0%増」へと上方修正した。

ESGによると、2022年第1四半期の貿易総額は、原油価格の上昇を受けて、前年同期比20.8%増加。また、非石油輸出は11.4%増だった。

(本田智津絵)

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