VW、電気自動車を活用した再エネ充電の実証実験を開始

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年07月06日

ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は6月21日、子会社でバッテリー式電気自動車(BEV)の充電などを手掛けるエリ(Elli)が地域配電事業者と協力し、再生可能エネルギー(再エネ)による充電について、BEVを活用した実証実験を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

VWは今回の実証実験で、ブランデンブルク州、ザクセン州、ザクセン・アンハルト州、チューリンゲン州など東部ドイツを中心に展開する地域配電事業者enviaMの子会社ミットネッツ・シュトロームと協力する。

実証実験には、VWのBEVである「ID.3」「ID.4」「ID.5」のいずれかを所有する約20人が参加する。参加者はアプリを通じて、自身のBEVの充電予定を入力、一方、地域配電事業者は再エネの発電予測を提供する。アルゴリズム・ソフトウエアを使い、再エネ発電量予測に基づき電力料金を変動させ、再エネ発電量が増加し系統負荷が見込まれる時間帯にBEV充電が行われるよう仕向ける。これによって、BEVが再エネの発電量が増えたときの「調整弁」になる。エリのニクラス・シルマー戦略副社長は「配電事業者にとって、BEVが『走る蓄電施設』になる」と表現している。

BEV所有者にとっては、安い電気料金で充電でき、また、無駄な発電がなくなることで電気料金全体の低下を享受できる。一方、地域配電事業者にとっても、系統負荷を踏まえた発電調整のコストを回避できるなどのメリットがある。実証実験は2022年6月から始まっており、今回の成果は2022年秋ごろに判明の予定だ。実証実験の詳細は専用のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(ドイツ語)で確認できる。

VWによると、系統負荷を防ぐため、2020年にドイツ国内で約6,200ギガワット時の再エネの発電が止められたという。これは、約260万台のBEVが年間走行できる電力量に相当する。ドイツでは、2030年までに電力消費量の80%以上を再エネにすることなどを定めた関連法改正案が2022年4月に閣議決定されており(2022年4月18日記事参照)、再エネに特徴的な発電量の大幅な変動を調整する技術・仕組みに、さらに注目が集まると予想される。

(高塚一)

(ドイツ)

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