ドイツ産業界、2035年までのEU全新車ゼロエミッション化への反対堅持

(ドイツ、EU)

ミュンヘン発

2022年07月06日

ドイツの産業団体は、6月29日にEU理事会(閣僚理事会)で合意された内容のうち、乗用車と小型商用車(バン)の新車からの二酸化炭素(CO2)排出量を2035年までに100%削減すること(2022年6月30日記事参照)に対し、各団体の見解を発表した。

ドイツ自動車産業連合会(VDA)は6月29日、乗用車と小型商用車のCO2排出基準に関する規制の改正案は、「内燃機関搭載車の2035年実質禁止に変わりない」と批判外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、合成燃料の扱い(注)が明らかになっていないとし、合成燃料を利用する内燃機関搭載車を認めないことは新市場での機会を逃すことになるとした。その上で、6月8日に欧州議会としての修正案となる「立場」の採択後の声明(2022年6月13日記事参照)と同様、全新車ゼロエミッション化達成の目標年を2035年に固定することは時期尚早で、2028年に包括的な検証を実施し、2030年以降の目標を決定すべきとした。また、充電・水素充填(じゅうてん)インフラ拡充のための枠組み条件の整備が必要とした。

ドイツ産業連盟(BDI)は6月29日、「大いに問題となる決定」と批判外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回の合意について、一見、合成燃料など新技術が認められる余地があるように見えるものの、実際は、内燃機関搭載車の2035年実質禁止のままだとした。その上で、2035年にどの技術が最適解になるかは今のところ誰にもわからないとして、合成燃料の可能性を最初から排除すべきではないとした。また、電動車普及の成功に必要なのは、欧州全域での充電設備の整備や、中でも、構造転換に直面する、数十万の従業員を抱える自動車関連サプライヤーへの支援である点を指摘した。

ドイツ機械工業連盟(VDMA)は6月30日、今回の合意では合成燃料の扱いが明確でなく、中堅・中小企業が多い機械関連業界にとって、将来が予測しづらいものになっている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとした。

自動車産業が集積するバイエルン州内の経済団体バイエルン経済連盟(vbw)は6月29日、内燃機関搭載車の2035年実質禁止を批判しながらも、合成燃料に一定の配慮がなされたことは「正しい方向への第一歩」と評価外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

シュテフィ・レムケ環境・自然保護・原子力安全・消費者保護相は6月29日、2035年までのEU全新車ゼロエミッション化について、「この合意は、われわれが気候目標を達成しなければならないという明確なシグナルであるとともに、自動車産業が自分たちの将来を確実に見通すために必要になるものだ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」とした。

(注)ドイツの現政権は2021年11月の連立協定書(2021年11月26日記事参照)で、2035年までに合成燃料車を除き、内燃機関搭載車の新規登録を禁止するという立場を示していた。

(高塚一)

(ドイツ、EU)

ビジネス短信 e763e75fe6fb3072