FTAのマイナス影響被る事業者の支援基金の設立案を閣議承認

(タイ)

バンコク発

2022年07月20日

タイ政府は628日、自由貿易協定(FTA)によってマイナスの影響を受ける農業、工業、サービス業などの地場企業を支援するための基金(いわゆるFTA基金)の設立案を閣議承認した。タイ商務省貿易交渉局(DTN)のオラモン・サッタウィータム局長が7月4日に明らかにした外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

FTA基金法の起草(2021年2月25日記事参照)は既に完了している。DTNは、財務省のリボルビングファンド管理政策委員会(同委員会がFTA基金設立案を内閣に提出)から閣議決定の正式な通知を受けた後、FTA基金法の草案を公聴会に諮る準備を進める予定だ。公聴会は34カ月以内に終了し、その後、法案を内閣、法制委員会、国会に提案し、承認を得る予定となっている。

FTA基金は、(1)コンサルティング費用や研修の資金、マーケティング活動などの分野の一時金、(2)投資や運営費に拠出するリボルビングファンドというかたちで提供される。また、政府機関や民間企業、農業事業者、学術機関、銀行と連携していく予定で、連携機関は、事業者がFTA基金の支援を受けるためのプロジェクトの企画・実施・報告といった役割を担う。具体的な連携機関としては、各県の商務局、農業局、商工会、農業組合のほか、タイ工業連盟、大学、農業・農業協同組合銀行、中小企業開発銀行などが想定されている。

FTA基金の設立後、同基金を管理する委員会も設置される見込みで、同委員会が事業者などから企画提案されたプロジェクトに承認を与える。具体的には、支援を申請した製造業者・サービス事業者について調査し、FTAの影響を受ける可能性のある商品・サービスの産業グループであることを確認し、その他の基準・条件に基づいて、プロジェクトを検討・承認する。

タイでは、政府がFTA交渉を推進する際、新たな協定によってマイナス影響を受ける可能性がある地場企業などが反対の声を上げる場合もある。FTA基金はそうした地場企業を救済するセーフティーネットとして、重要な役割を果たすと期待されている。

現在、タイは18カ国と14FTAを締結しており、当該国・地域との貿易総額はタイ全体の約63%を占める。最も新しい協定は、202211日に発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定。これに加えてタイは、トルコ、パキスタン、スリランカ、欧州自由貿易連合(EFTA:スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)、カナダ(ASEANカナダFTA)とFTA交渉を継続している。また、EUや英国とのFTA交渉の準備も進めているという。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ)

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