タイで「FTA基金」の設立検討が進む
(タイ)
バンコク発
2021年02月25日
タイ商務省貿易交渉局(DTN)は2月17日、「FTA基金」設立に向けた最終案がまとまりつつあることを明らかにした(DTN発表)。FTA基金は、自由貿易市場下での国際競争にタイ企業や農家が適合できるよう、FTAによるマイナスの影響を受けたタイの人々を支援する枠組み。FTAの影響が大きい産業関係者(特に農業)から、基金設立に向けて強い要望があるという。
同基金の設立は、「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」に、タイが参加することのコストとメリットを調査するための特別委員会がタイ政府に提案したことが背景にある。DTNのオラモン・サップタウィタム局長によると、「FTA基金設立計画を推進するため、関連調査や国内の利害関係者との公開協議を継続的に行ってきた」という。
FTA基金による支援は、(1)研究開発、コンサルタント雇用費、ワークショップ・研修、マーケティング支援などの活動に使える1回払い方式と、(2)建設投資や設備・工具の費用に使えるリボルビング払い方式、の2形態からなることが検討されている。政府、企業、農業、学会、地方銀行などの関係者で構成されるプラットフォームを設置し、希望者から提出された資金要求を調整し、FTA基金事務局に提案する。
現在、DTNは政府拠出金・予算以外の資金源を模索し、関係者と協議を重ねている。基金の持続的運営に当たっては、政府以外の財源が必要としている。これは、過去に同様のFTA基金が運営された際、単年度予算で持続性がなかった点を改善する試み。具体的には、商務省が得ているサービス手数料やFTAで利益を得られた業界からの寄付金などを想定している。
今後のFTA基金案の承認プロセスとしては、DTN内で結論が出た後、FTA基金設立案を精査する作業委員会(議長:商務次官)に提出され、ジュリン・ラクサナウィシット副首相兼商務相の承認を得る。次に、財務相が議長を務めるリボルビング基金管理政策委員会において検討され、承認を得る。その後、FTA基金の設立法案は公聴会を経て、内閣と国会にそれぞれ提出され、審議・承認を経て、法律が制定される予定となっている。
(シリンポーン・パックピンペット、北見創)
(タイ)
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