2022年の世界の電力需要は前年比2.4%増の見通し、IEA報告

(世界、中国、インド、欧州、EU)

国際経済課

2022年07月22日

国際エネルギー機関(IEA)は720日、「電力市場報告書(2022年7月版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。2022年の電力需要量は、ロシアのウクライナ侵攻以降の経済成長の鈍化(2022年4月21日記事参照)とエネルギー価格の上昇により、前年比2.4%増(注1)の26,933テラワット時(TWh)となる見通しだ。増加率(前年比)でみると、(新型コロナ禍からの)経済回復で大きく伸びた2021年(5.8%増)に比べて大きく縮小する。地域別(2022年)では、中国(3.1%増)を含むアジア大洋州の伸び(3.4%増)が大きい。インドでは同年第2四半期に例年以上の猛暑が続き、電力需要が記録的な伸び(7%増)となる。

2023年の増加率は経済の混乱と、燃料価格次第で発電構成が変わり得る不安定な状況から、2022年と同水準の前年比2.3%増と予測する。

2022年の電力供給量は、前年比2.2%増の28,847TWh。電源別では、再生可能エネルギーが2021年(前年比6.0%増)を上回り10.7%増となる。石炭は0.3%増にとどまる一方、天然ガスは1.9%減となる。2023年も再生可能エネルギー(7.7%増)による供給は増える見通し。

電力部門における温室効果ガス(GHG)の排出量は、2021年が前年比4.7%増だったが、2022年は0.3%減の1309,100CO2(二酸化炭素)換算トンとなる見通し。電力需要は緩やかな増加が見込まれる一方、再生可能エネルギーによる発電量の増加が続くことで(注2)、GHG排出量は2022年、2023年(1.0%減)と減少傾向になる。

2022年上半期(平均)の電力の卸価格は、前年同期比で3倍超となった。同時期に欧州でガス価格が4倍、石炭価格が3倍超となるなど、多くの国・地域で燃料価格が大幅増となったことが背景にある。

欧州のガス価格はEU排出量取引制度(EU-ETS)の対象で、同取引価格がガス価格のコストの一部に含まれている。20226月時点の同取引価格は20201月時点の3倍だった一方、ガス価格単体(同取引価格を除いた分)は同期間に8倍超となっており、ガス単体の価格上昇による影響が大きいとしている(注3)。

同報告書は半年に1度(毎年1月、7月)発表される。ロシアのウクライナ侵攻後は今回が初めてとなる。

(注1)新型コロナウイルス感染拡大前の5年間(20152019年)の平均増加率と同水準。

(注2)原子力は、2022年が前年比3.1%減だが、2023年は3.4%増となり、GHG排出量減に寄与するとしている。

(注3)同取引価格がガス価格全体に占める比率は、20201月時点では約3割だったが、20226月時点では15%を下回るとしている。

(古川祐)

(世界、中国、インド、欧州、EU)

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