エネルギー関連見本市「イー・ワールド」で水素の存在感高まる

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年07月05日

ドイツ西部のノルトライン・ウェストファーレン州エッセン市で6月21~23日、ドイツ有数のエネルギー・水ソリューションの総合見本市「イー・ワールド エネルギー&ウオーター 2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が2年ぶりにリアルで開催された。2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止された。主催者発表によると、今回は27カ国から736社が出展。来場者数は約1万5,000人だった。前回2020年の出展社数813社、来場者数約2万5,500人より減少はしたが、会場では活発に商談と情報交換が行われた。

写真 ドイツのエネルギー大手ユニパーのブースでは多くの商談が行われていた(ジェトロ撮影)

ドイツのエネルギー大手ユニパーのブースでは多くの商談が行われていた(ジェトロ撮影)

ドイツでは、ロシアからのガス供給量が削減される中、水素の活用拡大に向けた取り組みが急がれている。イー・ワールドでも水素は重要なテーマとなり、多くのエネルギー関連企業や研究機関などが水素の製造、貯蔵、輸送、活用に関する最新の取り組みを紹介した。

写真 自動車部品大手ボッシュも燃料電池システムを展示(ジェトロ撮影)

自動車部品大手ボッシュも燃料電池システムを展示(ジェトロ撮影)

会期2日目には「水素フォーラム」が開催され、経済・気候保護省が支援するH2グローバル財団(2021年6月23日記事参照)が水素の安定供給に向けた支援を紹介。また、ドイツ・エネルギー機構(dena)は、グリーン水素の活用を通じてさまざまなバリューチェーンの脱炭素化を進めていくことが重要で、そこに大きなビジネスチャンスがあると指摘。一方、将来必要となるグリーン水素の7割以上は輸入に頼らざるを得ないとの見込みを示した。

パネルディスカッションには、グリーン水素製造に向けたエンジニアリングを手掛けるティッセンクルップ・ニューセラ、ドイツの電力大手RWE、風力発電から水素製造を行うエネトラーク、ガスパイプライン運営大手のオープン・グリッド・ヨーロッパが登壇。各パネリストからは、ロシアからのガス調達が減少する中、水素の利用拡大に向けて政府に迅速な対応を求める意見や、グリーン水素が理想ではあるがブルー水素の活用も除外すべきではないとのコメントがあった。また、グリーン水素の規格が重要だとしつつも、グリーンスチールなど水素を使った製品の規格についても透明性が必要だとの指摘があった。

同フォーラムではこのほか、フランスのエネルギー大手エンジーなどがオランダ北海沿岸のドイツ国境近くで風力発電から水素製造を行うプロジェクト、ドイツのエネルギー大手ユニパーがドイツ中部バードラウシュテットや北部ウィルヘルムスハーフェンで進めるグリーン水素製造プロジェクト、フランスの石油大手トタルエナジーズによる水素供給ステーション・プロジェクトなど、水素の生産、活用に向けた具体的な取り組みが紹介された。

次回のイー・ワールドは2023年5月23~25日に開催予定。

(植田大)

(ドイツ)

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