2022年版「ジェトロ世界貿易投資報告」発表、世界経済の混乱要因と企業活動に与える影響に焦点

(世界)

国際経済課

2022年07月26日

ジェトロは726日、「ジェトロ世界貿易投資報告」の2022年版を発表した。世界経済の混乱要因と、貿易・投資、企業活動に与える影響に焦点を当てた。各章の要旨は以下のとおり。

I章 世界と日本の経済・貿易

2021年の世界貿易は、大きく落ち込んだ前年から26.2%増と大きく回復。輸出額ベースで初めて20兆ドルを超え、過去最高額を更新した。2021年後半以降、日本の貿易量の伸びは減速。202215月の輸出入は数量ベースでともに前年同期比マイナスに転じた。

II章 世界と日本の直接投資

2021年の世界の直接投資は前年比64.3%増とV字回復(2020年の伸び率は前年比35.0%減)し、新型コロナウイルス禍前の2019年を上回った。多国籍企業による内部留保利益の増加や、ソフトウエアを中心とするMA(金額ベース)の増加が牽引した。

2021年の日本の対外直接投資は前年比2.6%増とほぼ横ばいで推移。世界全体の投資がV字回復を遂げた半面、日本企業による対外直接投資は依然として停滞傾向が続く。

III章 世界の通商ルール形成の動向

ウクライナ紛争は、主要国の経済安全保障への関心や関連政策導入の機運を一層高める契機となった。自国の産業競争力強化やサプライチェーン強靭(きょうじん)化、重要技術の流出防止の政策立案が進展した。

米中間の技術覇権争いと相互の輸出管理強化にさらされる日本企業は、再輸出にかかる域外適用も視野に、規制や手続きの適切な理解、サプライチェーン全体での取引先の把握、自社の技術・研究開発データの管理など、社内体制の評価や見直しを基に適切に対応することが求められる。

IV章 持続可能な社会を目指す政策とビジネス

人権や温暖化対策など、企業経営の持続可能性やリスクマネジメントを評価する概念が普及。国際会計基準の策定を担うIFRS財団を中心に、統一的なIFRS持続可能性開示基準の策定作業が進む。

法制化により人権デューディリジェンス(DD)を義務化する国が欧州を中心に増加。また、米国は輸出管理に加え、輸入規制によって強制労働に依拠する製品を差し止めるなど、貿易措置との連動を拡大。米国に加えてカナダやEUでも類似の規制導入が審議・検討されている。

同報告の概要はジェトロの記者発表ページを参照。本文は「ジェトロ世界貿易投資報告」ページで公開している。

(伊尾木智子)

(世界)

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