米国企業幹部の半数近く「出張減少は長期的には企業の売り上げに悪影響」、米旅行業界調査

(米国)

米州課

2022年07月07日

全米旅行産業協会(USTA)は6月29日、米国企業のビジネストラベル動向に関する調査結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注)を公表した。米国内の企業幹部の46%が、出張機会を減少させることは短期的には経費の節約になるものの、長期的には企業の売り上げに悪影響を与えると考えていることが明らかになった。また、企業幹部の36%が、出張機会の減少が企業の業績に悪影響を与えると考えており、顧客の獲得や維持に悪影響は30%だった。

企業幹部の73%は出張を企業運営上で不可欠な要素と考えているものの、「オンラインミーティング」(75%)や「コスト管理」(69%)、「顧客によるリモートワーク」(69%)などの理由から、今後も出張機会の減少は続くことになると予想している。また、企業幹部の3分の2以上が、今後6カ月間に支出する出張費は2019年の同時期と比較して減少すると予想した。

出張が重要と考える理由として、企業幹部の69%が「出張による人間関係の構築」を挙げた。その他、「自社製品・サービスの認知度向上」(57%)、「市場トレンドの把握」(45%)、「研修などの能力開発」(44%)、「エンゲージメントと従業員としてのモチベーション」(44%)、「競合他社に対する優位性の確保」(38%)、「販売契約の最終手続き」(27%)が続いた。

なお、新型コロナウイルスによるパンデミックが発生した2020年以降、出張を制限する方法として、企業幹部は「出張機会の削減」(71%)、「1回の出張に派遣する従業員数の削減」(58%)などの対応を取っているが、半数強に当たる52%は、2022年内に社内の出張制限措置を見直すとしている。

USTAは出張をしている従業員に対しても同様の調査を実施しており、調査対象となる従業員の勤務形態については、出張を除いてリモートワークを完全に実施している割合は32%となり、「完全にオフィスへ出社する」(19%)を上回った。リモートワークを完全または部分的に実施する従業員(全体の81%)が、企業側から出張を奨励されているものとして、「同僚やチームメンバーとの対面式での面談」(37%)、「上司との対面式での面談」(36%)、「研修への対面式での参加」(25%)という結果になった。また、従業員の32%が出張機会の減少が企業の業績に悪影響を与えると考えており、「出張機会を減少させることは短期的には経費節約につながるが、長期的には会社の業績に悪影響を与える」と回答した従業員の割合は16%にとどまった。

なお、米国ではオフィスに従業員を戻らせたい経営者と、リモートワークを続けたい従業員とのギャップが指摘されている(2022年2月18日記事参照)。米国グーグルでは2022年3月に従業員に対して、週3日は最寄りのオフィスに出社するよう求めたほか、米国電気自動車(EV)メーカーのテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は5月31日、従業員に対して最低週40時間のオフィスに出社を要請し、要請に従わない場合には退職したものと見なすと従業員に通達した。出社を事実上、義務付けたことに、社内外から批判が寄せられるなど、一部では社会問題化している。

(注)USTA、JDパワー、ツーリズム・エコノミクスが米国内の企業経営者195人、およびデトロイトやフィラデルフィアなど全米5都市の空港の出張者2,545人を対象に実施。実施期間はそれぞれ、2022年5月20~23日、2022年5月13~24日。

(葛西泰介)

(米国)

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