新憲法の草案完成、9月4日に国民投票実施へ
(チリ)
サンティアゴ発
2022年07月13日
チリの新憲法議会は7月4日、完成した新憲法の草案をガブリエル・ボリッチ大統領に提出し、草案承認の是非を問う国民投票実施の大統領令への署名が行われた。これにより、2カ月後の9月4日に国民投票を実施することが決定した。
2019年10月に始まった反政府デモの参加者の主な要求の1つとなっていた新憲法の制定について、その後の国民投票で約8割の投票者が賛成票を投じ(2020年10月27日記事参照)、選挙を通じて組織された新憲法議会による約1年の議論期間を経て、草案完成に至った。軍事政権下の1980年に制定された現行憲法には、健康や教育などに関する国家の義務や、先住民族の認知について記載が不十分という指摘が草案の支持者たちからは上がっていた。
新憲法草案は11章388条から成り、チリを多民族・多文化の社会的・民主的法治国家と定義し、現行憲法にはない先住民族の認知や権利、保護について記載が盛り込まれた。また、国家によるジェンダー平等を推進するための法整備などの措置の実行や、国家の義務として教育、住宅、健康、労働の保障を定義するなど、現政権の政策方針とも共通項がみられる。さらには、上院に代わる地方院の新設や、大統領選への立候補可能年齢を現行の35歳から30歳へ引き下げ、大統領の再選(1度のみ、連続も可で、最高8年)についても規定した。
複数の民間調査会社が実施した世論調査結果によると、草案の承認に「反対」の割合は「賛成」をいずれも10~20%程度上回っている(添付資料表参照)。同草案が承認されなかった場合には、現行憲法が引き続き有効となるほか、今回の国民投票では義務投票制が適用されることから、投票日へ向けた世論の形成に注目が集まる。
(岡戸美澪)
(チリ)
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