米連邦取引委、個人の健康・位置情報の不正使用に注意喚起

(米国)

ニューヨーク発

2022年07月13日

米国連邦取引委員会(FTC)は711日、機微な個人情報の不正使用について、関連法令を厳格に執行する方針を表明した。FTCクリスティン・コーエン・アソシエートディレクター代行はブログ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、通信機器などにより収集された個人の位置情報と健康情報が、データ仲介業者などを通じて企業や政府機関に渡り、詐欺や差別行為に使用されるリスクを指摘。また、そうした情報の流通が、消費者が認識できない方法で行われていることに懸念を示した。

コーエン氏はブログで、消費者の機密情報を収集する際に企業が考慮すべき3つの事項を記した。第1に、機微データの収集や使用、共有を規制する連邦法や州法を挙げた。これには、FTCが執行を担う健康侵害通知ルール外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注)や児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)に基づく規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも含まれる。第2に、個人情報を匿名化しているという企業の主張が事実でない場合、不正な通商慣行としてFTC法違反になり得ることに注意を促した。第3に、FTCは個人データを悪用する企業を取り締まると言明した。

FTCによる今回の方針表明は、ジョー・バイデン大統領が7月8日に生殖医療サービスへのアクセス保護に関する大統領令を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした直後に出された。同大統領令は、連邦最高裁判所が6月に、女性の人工妊娠中絶権を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆したことを受けたもの(2022年6月27日記事参照)。バイデン大統領は、同判決の破棄により「全米の数百万人の女性のプライバシーや自律、自由、平等の基本的権利が否定された」と批判。大統領令で、生殖医療へのアクセス保護や患者や医療提供者の安全確保などに加え、患者のプライバシー保護のための対策を講じるよう関係省・機関に命じた。FTC委員長に対しては、患者が生殖医療の情報や提供を求める際のプライバシー保護策を検討するよう促した。

「ロー対ウェイド判決」の破棄を受け、市民権団体などの間では、個人の位置情報や健康情報が中絶を禁止・制限する州の法執行に利用されかねないとの懸念が強まっている。こうした懸念に対し、保健福祉省は629日、生殖医療を検討する個人やその提供者向けに、医療情報の保護に関するガイダンスを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。与党・民主党では、中絶権の保護を求めるエリザベス・ウォレン上院議員(マサチューセッツ州)らが、データ仲介業者による米国人の健康・位置情報の販売を禁止する法案を議会に提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている(2022年6月29日記事参照)。

(注)個人健康記録(PHR)のベンダーなどに対し、データ侵害が発生した場合に消費者への通知を義務付ける規則。

(甲斐野裕之)

(米国)

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