マハーラーシュトラ州新政権、新幹線プロジェクトを再始動

(インド)

ムンバイ発

2022年07月27日

インド西部のマハーラーシュトラ(MH)州で714日、デべンドラ・ファドナビス州副首相は州都ムンバイ~グジャラート(GJ)州アーメダバード間の高速鉄道建設事業について「国家事業と位置付けている新幹線プロジェクトに必要な許可申請を新州首相が承認した」と発表した(「インディアン・エクスプレス」紙715日)。

201911月の州選挙で地域政党シブセナが与党となり、国家プロジェクトと位置付ける新幹線推進派のインド人民党(BJP)が下野して以降、同プロジェクトは膠着(こうちゃく)状態だった。ウッダブ・タークレー前州首相は当時、「この事業はMH州民に何も役に立たない」と反対し、代わりにインド最大都市ムンバイから、州東部の中核都市ナグプール間の高速鉄道建設の必要性を唱えていた。前政権時代、総区間508キロ(注)のうち、MH州側156キロに要する用地取得は39%しか完了していなかった(2019年7月3日記事参照)。特にムンバイのバンドラ・クルラ・コンプレックス(BKC)地区のターミナル駅建設予定地や、用地内のガソリンスタンドや消防署の移転、全長21キロの海底トンネル始点のビクロリ地区など重要な用地取得のめどが立っていないことが計画全体の遅れとコスト上昇に直結すると懸念されていた。

630日に新たにエクナット・シンデ州首相が就任し、新幹線プロジェクトの成り行きが注目されていたが、約3年ぶりに与党に返り咲いたBJPとともに、前政権の未承認案件を一気に決断したかたちだ。シュリバスタバ州首席次官は713日、周辺自治体(ムンバイ郡、タネ郡、パルガール郡など)の長を招集し、ムンバイ首都圏開発公社(MMRDA)に建設予定地の引き渡しを指示し、周辺自治体にも用地取得の問題解決を命じた。またMMRDAは、ムンバイ駅建設予定地に大規模な新型コロナウイルスのワクチン接種施設「ジャンボCOVIDケアセンター(CCC)」を建設していたムンバイ市行政当局(BMC)に9月末までに立ち退くよう命じた。

インド高速鉄道公社(NHSRCL)は全体計画の遅れについて、具体的な時期を明らかにしておらず、「2026年中にGJ州の一部区間で試運転を開始する」「2027年からGJ州内区間は旅客運送を開始できる」といった声明をたびたび出したのに対し、各メディアは、新型コロナ感染拡大やMH州側の遅れから、開業は2030年まで遅れると報じている。こうした中、MH州が推進派政権になったことで、事業の再始動に期待が高まっている。

(注)日本とインド間で締結した同事業の公式距離は505キロ。

(松永宗徳)

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