IDBと大蔵公債省がテワンテペック地峡開発向けの金融支援を発表

(メキシコ)

メキシコ発

2022年07月14日

米州開発銀行(IDB)とメキシコ大蔵公債省は7月10日、メキシコ南東部のテワンテペック地峡へ生産移管を行う企業に対する融資プログラムなど、同地域開発に向けた支援策を発表した。

大蔵公債省のガブリエル・ジョリオ次官、IDBのリチャード・マルティネス副総裁、テワンテペック地峡大洋間回廊開発公社(CIIT)のラファエル・マルティン総裁、IDBインベストのジェームス・スクライブン最高経営責任者(CEO)は7月7~8日、同開発予定地を訪問し、開発ポテンシャルを確認した上で今回の発表を行った。IDBと大蔵公債省は同訪問に先立つ7月6日付の記者会見において、新型コロナ禍でのサプライチェーン分断を回避するためのニアショアリングの再評価により、メキシコが短期・中期的にGDPの2.6%に相当する350億ドルの投資を呼び込む可能性があるとしており、特に連邦政府が大規模な投資を行っている南東部にポテンシャルがあるとしていた(大蔵公債省プレスリリース7月6日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

今回の発表によると、IDBはテワンテペック地峡開発を中心とした、企業のメキシコへの生産移転プロジェクトに18億~28億ドルを融資する。そのうち、最初の2億ドルについては、国立金融公社(NAFIN)や経済省を通じて主に中小企業向けに融資する。なお、連邦政府が進めるテワンテペック地峡開発プロジェクトは以下の内容から成る(大蔵公債省プレスリリース7月10日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

  1. 連邦政府によるインフラ投資(鉄道・道路網の整備、港湾拡張)
  2. 民間企業への融資
  3. 10の産業開発地域において操業する企業に対する税制インセンティブ(注)
  4. 地峡地域の人材開発

1.に関しては、メキシコ湾(大西洋)岸のベラクルス州コアツァコアルコス市とオアハカ州サリナクルス市をつなぐ、全長300キロを超える鉄道路線がほぼ完成しており、2022年中に運行を開始する予定。港湾拡張については15の計画があるが、メキシコ湾岸のコアツァコアルコス港とパハリート港の4プロジェクトが既に完了しており、サリナクルス港の多目的ターミナルの埠頭(ふとう)拡張も完成している。同港では、西側防波堤の建設工事が進行中。

自動車産業の南東部への生産移管には課題も

政府は、北部に集中している製造業などを、南部に誘致することに力を入れている。しかし、南部には自動車産業などが立地するのに十分なインフラも産業集積もないため、短期的な生産移転は見込めないと指摘する声もある。メキシコ自動車工業会(AMIA)のファウスト・クエバス会長は「このような地域への立地を決定するために重要な要素は、産業界が求めるサービスやコミュニケーション手段が存在することだ」と、南東部への進出に慎重な立場を示した(「レフォルマ」紙7月10日)。

(注)ベラクルス州コアツァコアルコス市の2カ所、テキステペック市、サンフアン・エバンヘリスタ市、ハルティパン市、オアハカ州のイシュタルテペク市、イシュテペク市、サンタマリア・ミシュテキーラ市、サンブラス・アテンパ市、サリナクルス市の10拠点で、北部国境や南部国境地帯に適用されているような所得税(ISR、法人と個人の合計)や付加価値税(IVA)のインセンティブ(2021年1月8日記事参照)が導入されるものとみられる。詳細は未発表。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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