米国務省、「人身取引報告書」発表、クリーンエネルギー産業での人権尊重重視

(米国、中国、コンゴ民主共和国、ウクライナ、ロシア)

ニューヨーク発

2022年07月22日

米国国務省は719日、人身取引に対する世界各国政府の取り組みを評価した「2022年人身取引報告書」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書は「2000年人身取引被害者保護法(TVPA)」に基づいて2001年から毎年公表されている。2022年の報告書では、米国を含む188カ国・地域の人身取引への対策状況をまとめている。

報告書では冒頭、中国の「一帯一路」プロジェクトで強制労働が行われている状況や、クリーンエネルギー産業での人権尊重の重要性などについて特記している。一帯一路については、アフリカや欧州を含む各地域のプロジェクトで、長時間労働や移動の自由の制限、渡航・身分証明書の没収など、強制労働を示す行為が見られると報告した。また、労働者の募集方法や労働条件に対する中国政府の監視が十分に働いていないとして、プロジェクト実施国に自国民や移民労働者らを保護するよう求めた。クリーンエネルギー産業では、太陽電池モジュールに使われる金属ケイ素が中国の新疆ウイグル自治区で、電気自動車(EV)バッテリーの材料となるコバルトがコンゴ民主共和国で、それぞれ強制・児童労働を伴って製造・採掘されていると指摘。太陽光発電製品に関しては、原材料の採掘や金属ケイ素の製造に強制労働の使用が集中しているため、サプライチェーンの川下に当たるセルやモジュールの生産者も人権侵害に関与するリスクがあると警告した。

各国・地域別の報告でも、中国を人身取引への対策が最も遅れているグループ(ティア3)に分類し、新疆ウイグル自治区でのウイグル族らの強制労働を問題視している。また、同じくティア3に位置付けたロシアについては、2月のウクライナ侵攻後、子供を含む数千のウクライナ人がロシア軍などによってロシアへ強制的に移住させられたとの報告に言及。そうしたウクライナを逃れた難民が人身取引に対して弱い立場に置かれていると記した。

アントニー・ブリンケン国務長官は報告書の発表に伴う式典外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、この報告書がバイデン政権が策定した「人身取引に対抗するための国家行動計画」で重要な役割を担うと指摘した(2022年7月6日記事参照)。国務省は715日には2022年の「大量虐殺や残虐行為の防止に関する報告書」を議会に提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、エチオピアやミャンマーなどでの人権侵害への対応についても報告している。

(甲斐野裕之)

(米国、中国、コンゴ民主共和国、ウクライナ、ロシア)

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