取締役居住者要件の例外措置は終了とみなした対応が必要

(ミャンマー)

アジア大洋州課

2022年07月19日

ミャンマーでは、2022417日に国際旅客便の乗り入れが再開され、6月には日本とミャンマーとを結ぶバンコク乗り継ぎ便の運航も再開されたことなどから、日本に一時帰国していた日系現地法人の取締役および支店の代表者が、ミャンマーに再渡航を計画する事例が多くなるとみられる。しかし、再渡航の時期を検討する際は、ミャンマー会社法が規定する取締役などの「居住者要件」に留意する必要がある。ジェトロ・ヤンゴン事務所は、71日にミャンマー日本商工会議所と共催した「法務・労務・会計・税務等に関する一問一答セミナー」において、かかる留意点について説明した。

ミャンマー会社法(201881日施行、以下、新会社法)は、会社の取締役の1人以上、および外国企業の支店の代表者は、法律に基づく永住者、または12カ月間に183日以上ミャンマー国内に滞在する居住者でなくてはならないと規定している。しかし、投資企業管理局(DICA)は、「新型コロナウイルス対策のため国際旅客便の乗り入れが禁止された2020329日から、政府による公式な入国再開日まで、同法が求める居住期間に算入しない」とする例外措置を導入した(20201023日記事参照)。

この点について、西村あさひ法律事務所の湯川雄介弁護士は、上記セミナーにおいて「ミャンマー政府から発表はないが、本例外措置の趣旨からすれば、国際旅客便の乗り入れが再開した2022417日をもって、例外期間は終了したと考えて対応するのが安全だ」と解説した。また、ジェトロが他の現地法律事務所にもヒアリングしたところ(629日時点)、例外期間は終了したという前提で対応することが望ましい点では一致しているが、以下のとおり居住者要件算定期間の起算点(注)について不明な点が残されていると指摘した。

例えば、日本企業のミャンマー現地法人が新会社法施行後の2018111日に登録された場合、同法人の取締役の居住者要件の算定期間は、登録日である111日~翌年1031日となる。他方、DICAが導入した例外措置では、2020329日~2022416日の期間は、居住者要件の算定期間から除外される。しかし、DICAは同例外措置の終了後について、「12カ月に183日以上滞在」という居住者要件の起算点をどのように適用するか示していない。

TMI総合法律事務所の甲斐史朗弁護士は、DICAの判断は不明と前置きしつつ「最も確実な方法は、国際商業旅客便の乗り入れ禁止が解除された2022417日から、2022年の新会社法上の起算点(旧会社法下で設立された現地法人や支店は81日、新会社法下で設立された現地法人や支店は、その設立日)までの期間を対象として、その過半の日数をミャンマーで滞在することだと思われる」と指摘している。

(注)居住者要件算定期間となる12カ月間の起点は、ミャンマー新会社法上、(1)旧会社法の下で登録された法人・支店(設立日が2018731日まで)はミャンマー新会社法の施行日(201881日)、(2)ミャンマー新会社法の施行日以降に登録された法人・支店はその登録日とされている。

(アジア大洋州課)

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