5月の業況は2カ月連続下落、物価上昇が影響
(タイ)
アジア大洋州課
2022年07月11日
タイ工業連盟(FTI)によると、タイの5月の業況判断指数(TISI、注)は、前月比1.9ポイント減の84.3ポイントとなった。3月には、新型コロナウイルス感染拡大以降で最も高い89.2ポイントを記録したが、その後4、5月は2カ月連続の減少となった。
業種別でみると、全45業種中19業種が前月比で上昇。特に、石油精製(166.7ポイント)、電力(160.0)、医薬品(143.6)、医療・ヘルスケア機器(131.1)などは、業況良しあしの判断基準値の100ポイントを大きく超えている。他方、ゴム製品(130.3)、自動車(125.0)、エアコン(124.3)、アルミニウム(124.0)などでは、指数が前月比で低下したものの、引き続き100ポイントを超えており、業況は良いと判断される。その他、ファッション業界や建設業界は全ての業種で100ポイント未満、かつ多くの業種が前月比で悪化と、厳しい業況感にある。
FTIによると、5月の業況判断のマイナス要因として、長期化するウクライナ情勢により、燃料や原材料の価格が上昇し、企業の生産コストを押し上げたことや、物価上昇が消費者の購買意欲を停滞させたことを挙げている。特に、ウクライナ情勢によって世界経済の先行きが不透明となり、それがタイの輸出にもマイナス影響を与えたと指摘。その他、中国で実施された新型コロナウイルス対策の都市封鎖により、自動車や電機電子産業で半導体不足が発生した点にも言及。他方、プラス要因としては、タイの新型コロナ禍の入国・行動制限緩和による経済活動の活発化が挙げられる。この点、政府は6月23日、入国手続きや国内行動規制をさらに緩和することを公表している(2022年6月28日記事、6月29日記事参照)。
FTIはまた、今後3カ月間の業況に影響を与え得る要因として、新型コロナウイルスや為替レート、国内政治、金利の動向に対する懸念は下がった一方、燃料価格や国内外の経済状況に対する不安は高まっていると説明している。
(注)TISI(Thai Industries Sentiment Index)は、FTIが加盟企業(製造業を中心とする45業種)に毎月行っている景況感に関するアンケート調査に基づく指数。当該月の現況と、3カ月先の見通しをそれぞれ聞いており、100を超えると「業況が良い」、100を下回ると「業況が悪い」を示す。5月は1,323社が回答。
(田口裕介)
(タイ)
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