インフレ進行も、ペット産業は好調

(チリ)

サンティアゴ発

2022年07月22日

2021年の半ばから急速にインフレが進行し、20226月に発表された前年同月比の消費者物価指数(CPI)上昇率が12.5%にまで達したチリだが(2022年7月20日記事参照)、ペット産業の動向は好調なようだ。720日付の「ディアリオ・フィナンシエロ」紙は、業界大手のスペル・ソー(SuperZoo)が、現在チリ国内で所有している39の自社店舗数を年内に51まで拡大する計画を報じている。ペルーに起源を持つ同社は、スペインやフランスなどの欧州でも事業を展開する多国籍企業だ。チリとペルーに共通する商流を活用しつつ、現在主流としているペットフード、ペット用の薬や玩具の販売のみならず、今後はトリミングや医療サービスなどの分野に力点を置いた中長期的なビジネス拡大計画について、記事内では語られている。

国内の消費市場の下地となる人口は2,000万人弱と決して多くはないチリだが、ペット産業の好調を裏付ける1つのデータが存在する。民間調査会社のカデム(CADEM)が20222月末に国内の13歳から71歳までの男女約2,500人を対象に実施した世論調査によると、全体の86%もの回答者が自宅で犬や猫などのペットを飼っていると回答しているのだ。チリ経済に深刻な打撃をもたらした2019年の社会騒乱や、2020年以降の「新型コロナ禍」が訪れる以前、同様の質問に対する回答が73%だったことに鑑みれば、景気が振るわない中でもペットを所有する割合が年々高まっている状況がうかがえる。さらには、「ペットを飼っている」という回答者が自宅で保有しているペットの平均数は2.7匹で、いわゆる多頭飼いも珍しくはない。

ここ数年は、国内の経済格差などのネガティブな話題ばかりが取り沙汰されることの多いチリだが、とりわけペットへの愛着に関しては幅広い層の国民に共通しており、国内に特殊な市場を形成しているといえそうだ。

(佐藤竣平)

(チリ)

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