経済省、パナソニック関連会社の労働権侵害疑惑をめぐるUSMCAに基づく米国要請への適切な対応を表明

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2022年05月24日

メキシコ経済省は5月18日、ウェブサイトでプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、メキシコ北東部タマウリパス州レイノサ市の日系自動車部品メーカー、パナソニックオートモーティブシステムズ・メキシコにおける労働権侵害の疑いについて、USMCA別添31-Aが定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づく、米国政府の事実確認要請(2022年5月23日記事参照)を正式に受領したことを明らかにした。

同プレスリリースでは、メキシコ政府が経済省を通じて同要請の内容を検証し、労働社会保障省とも協議をした上で、USMCAの規定に基づき、適切な期限内(10日以内)に米国政府に回答をするとしている。また、メキシコ政府はUSMCAの規定および国内法規を効果的に執行することを繰り返し約束し、メキシコの労働者にとっての透明性と信頼性を保証するとしている。

提訴した労組が既に労働協約締結の代表権を獲得

メキシコの新興独立系労組の全国工業サービス労働者独立組合20/32運動(SNITIS)と米国の非営利団体リシンク・トレードが、パナソニック関連会社の労働権侵害の疑いについて米国政府に提訴したのは4月18日。企業と労働協約を交渉する組合の代表権獲得投票(注)のプロセスにおいて、それまで同社と労働協約を締結していたメキシコ労働者連合(CTM)傘下のメキシコ・マキラドーラ工員工業組合(SIAMARM)による労働者の買収行為などの違法行為が散見されたという理由だ(「エル・エコノミスタ」紙5月19日付)。

連邦調停労働登録センター(CFCRL)の4月23日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、その後、4月21~22日に代表権獲得投票が実際に行われ、SNITISが74.42%の圧倒的多数で勝利した。今後、SNITISがパナソニックオートモーティブ・メキシコとの間で労働協約の交渉を開始することになる。SNITISは、同じくUSMCAのRRMに基づき、タマウリパス州マタモロスのトリドネックスの労働権侵害についても提訴した組合の一つであり(2021年5月12日記事参照)、北東部を中心に過激な活動を続ける新興労組というイメージが強い。今回、訴えた組合が既に代表権を獲得していることから、過去2回のRRMに基づく案件と同様、外部専門家で構成するパネルを設置する前に事案が解決する可能性は高い。

(注)2019年5月1日に公布された連邦労働法改正に基づき、新設された第390条Bisにおいて、労働協約を締結する組合が労働者の声を真に代表すること(最低でも職場の30%以上の労働者の署名が必要)を確認する組合間の投票プロセスが定められている(2019年5月7日記事参照)

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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