拡大するインド宇宙産業のビジネスチャンス、ジェトロがウェビナー

(インド、南西アジア、日本)

べンガルール発

2022年07月14日

ジェトロは75日、インドの宇宙産業に係るウェビナーを開催した。インドの宇宙産業の投資誘致策や現地企業との連携に携わる関係機関の担当者が最新動向や日系企業との連携が期待される分野などを紹介した。

モディ政権は発足当初の製造業振興策「メーク・イン・インディア」(2018年3月30日記事参照)に続き、新型コロナウイルス禍の中で、新たな産業の需要喚起と輸入依存から脱するため「自立したインド」を打ち出し(2020年5月14日記事参照)、宇宙分野を重要政策分野の1つとした。これを受け、政府は宇宙産業関連の予算を急増させ、インド国立宇宙推進認可センター(IN-SPACe)を20226月に発足させている。加えて、外資も含めた民間宇宙事業の許認可を行うワンストップ窓口を設けるなど、制度の整備と拡充も進めている。また、衛星の製造と運用事業に最大100%の外国直接投資を許可するなど、規制緩和にも着手。この動きに対応するかたちで、宇宙ビジネスに取り組む国内スタートアップ企業への投資も急増した。630日には、韓国が製造したシンガポール所有の人工衛星3機に加え、地場のスタートアップ2社が製造した人工衛星を搭載したロケットが打ち上げられた(インド初の国産民間衛星の打ち上げ)。

IN-SPACeのプロモーションディレクターのビノッド・クマール氏は、投資認可機関としての機能に加え、インド企業と外国企業の橋渡しとしての役割についてコメントしている。中でも同氏は、宇宙ビジネスでの日本とインド企業間の連携の可能性は高いとし、併せて、ロケットや衛星、これらの部品やコンポーネントへの需要が増すと見込んでいる。その理由として「地球観測衛星の用途は、農業分野を例にとってみても、インド国内の主要作物の収穫動向に加え、最適な収穫時期の把握や、災害による被害を回避するなど、さまざまな用途と可能性を秘めている」点を挙げた。その上で「地球観測のデータ分析力や、リモートセンシングなどで先行する日本からの技術移転や、高品質との評価が高い日本の科学機器、電子部品の衛星への組み込みなど、インド側から日系企業との連携が期待されている」と強調した。貿易制度上の障壁となっているインドの商業衛星(完成品)の輸入禁止措置に関しては、措置の緩和・撤廃に向け、両国の間で対話を進めているとコメントした。

写真 ISROの組織構造、右上は説明するクマール氏(ジェトロ撮影)

ISROの組織構造、右上は説明するクマール氏(ジェトロ撮影)

なお、ジェトロは調査レポート「インド宇宙産業における官民の取り組みと中長期的ビジネスチャンス(JETRO航空宇宙調査シリーズ)」を公表する予定だ。同レポートでは、インド宇宙産業の概況に加え、日印企業の連携分野や、インド国家宇宙研究機構(ISRO)が求めている技術や機器情報など、日系企業の具体的なビジネスチャンスを紹介する。

(桑原繁、倉谷咲輝)

(インド、南西アジア、日本)

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