オランダ半導体大手ASML、米コネチカット州に2億ドルの拡張投資

(米国、オランダ)

ニューヨーク発

2022年06月07日

米国商務省は5月31日、オランダの半導体製造装置大手ASMLがコネチカット州ウィルトンの施設に2億ドルの拡張投資を決定したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ASMLは世界で唯一、次世代型露光装置とされる極紫外線(EUV)リソグラフィ装置を製造する半導体関連企業だ。EUVリソグラフィ装置は、従来型の露光装置では加工が困難なより微細な寸法の加工を可能とする。ウィルトンの施設は1974年に設立され、米国内で最大の研究・開発施設となっており、現在1,600人以上を雇用している。今回決定した拡張投資により、向こう2年間で約1,000人の新規雇用が創出される見込みだ。同社のピーター・ウェニンク最高経営責任者(CEO)は「半導体産業の成長は速いペースで続いていく。予測される需要を満たすため、ASMLはインフラと人材に投資する。コネチカット州ウィルトンの施設はその投資の好例であり、当社の成功の基盤となる米国内拠点の1つ」との声明を出している。

米国では、半導体受託生産の世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が2020年5月にアリゾナ州での工場建設を発表して以降、半導体関連企業が相次いで工場新設や追加投資を発表している(注)。その背景の1つには、新型コロナウイルスによるサプライチェーンの混乱により半導体供給不足問題が起きたことが挙げられる。現在も自動車産業を中心に影響が続く中、バイデン政権や連邦議会では、半導体供給を海外に依存する状態から脱却すべきとの動きが出ている。その最たる例が議会で審議中の超党派イノベーション法案だ(2022年4月11日記事参照)。同法案には、米国内の半導体産業を支援する520億ドルの補助金が含まれており、産業界からも早期の成立が期待されている。ドン・グレイブス商務副長官はASMLによる今回の発表を受けて「この勢いに乗せて、大統領が署名できるよう超党派イノベーション法案を可決すべきだ。この法案は、経済と国家の安全保障にとって重要だ」と述べ、議会に対して早期の可決を呼び掛けた。議会では、5月12日に法案調整のための上下両院合同委員会が開始されたが、調整が8月の夏季休会前に終わるかどうかが1つの山場となる。

(注)主要な事例として、インテルによるアリゾナ州での新工場建設(2021年9月30日記事参照)、サムスン電子によるテキサス州での新工場建設(2021年11月24日記事参照)、インテルによるオハイオ州での新工場建設(2022年1月24日記事参照)、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズによるアリゾナ州での拡張投資(2022年4月4日記事参照)が挙げられる。

(磯部真一)

(米国、オランダ)

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