米財務省が為替報告書を公表、引き続き「為替操作国・地域」認定はなし、日本の為替介入牽制

(米国、日本、中国、ベトナム、台湾、スイス)

ニューヨーク発

2022年06月14日

米財務省は6月10日、為替政策報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。同報告書は半期に1回、議会に提出されるもので、今回は財・サービス貿易の輸出入総額の上位20カ国・地域を対象に、2021年12月までの直近1年間の為替政策を分析・評価した。

今回の報告書では、バイデン政権発足以降の前回・前々回(2021年4月20日記事12月7日記事参照)と同様に、「為替操作国・地域」に該当する国・地域はないと結論づけた。為替操作国・地域認定は、2015年の貿易円滑化・貿易執行法に基づく3つの基準(注1)の全てを満たしているかどうかを基に判断する。前回の報告書では、ベトナムと台湾が基準を全て上回っていると指摘したものの、今回は基準を全て下回った。一方で、前々回にこれらの基準を全て上回っているとしたスイスが再び基準を全て上回っていると指摘した。ただし、対外不均衡是正に向けた2国間協議を続けているなどとして、為替操作国・地域認定は見送った。なお、ベトナムと台湾は、同国・地域対象リストから外れたが、代わって「為替操作監視対象」リスト(注2)に加えられた。同リストはベトナム、台湾以外に、日本、中国、韓国、ドイツ、イタリア、インド、マレーシア、シンガポール、タイ、メキシコの10カ国を指定している。

今回の報告書で、日本についてはこれまでと同様に、為替介入額を毎月公表するなど透明性が高く、2011年以降は為替介入自体行っていないなどと評価した。また、最近の急速な円安の進行について「日米金利差拡大が主因」「実質実効為替レートで50年ぶりの円安に近い水準」と指摘。一方で「為替介入は適切な事前協議を伴う非常に例外的な状況に限定されるべき」と前回・前々回と同じ表現を踏襲するかたちで日本政府による今後の為替介入を牽制した。

中国については、2022年初からの新型コロナウイルス感染者の急増により、都市のロックダウンが加速しており、経済の下振れリスクに直面していると指摘。また、中央銀行の為替政策の透明性は極めて限定的で、報告書の中で唯一、為替市場介入を行っているかどうか自体を公表していない異例の国と批判している。このため、財務省は日々の為替市場の動きから中央銀行が為替市場介入を行ったかどうかを推定することを余儀なくされており、引き続き人民元の為替レートの動きを注意深く監視していくとした。

(注1)財・サービス貿易の輸出入総額上位20カ国・地域を対象に、(1)大幅な対米貿易黒字(年間150億ドル以上の財・サービス貿易黒字額)、(2)GDP比3%以上の経常収支黒字、またはGDP比1%以上の現在の経常収支と長期的経常収支の間の乖離、(3)持続的で一方的な為替介入(過去12カ月間のうち8カ月以上の介入、かつGDP比2%以上の介入総額)という3つの基準。

(注2)上記3基準のうち2つに該当した国・地域は「監視対象」リストに登録される。登録されると、少なくとも今後2回の報告書で監視対象国・地域として取り上げられ、3つの基準での改善が一時的でなく永続的なものとなっているかどうかについて評価される。

(宮野慶太)

(米国、日本、中国、ベトナム、台湾、スイス)

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