米財務省、台湾・スイス・ベトナムへの「為替操作国・地域」認定を見送り

(米国)

ニューヨーク発

2021年04月20日

米国財務省は4月16日、「米国の主要貿易相手国・地域のマクロ経済と為替政策PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States)」報告書を公表し、議会に提出した。報告書は半期に1度議会に提出されるもので、今回は2020年12月までの直近1年間を対象期間として、米国の主要な20の貿易相手国・地域の為替政策を分析・評価している。バイデン政権となって初めての公表となる。

報告書は、前回報告で「為替操作国」に指定したスイス、ベトナムについて(2020年12月18日記事参照)、2015年の貿易円滑化・貿易執行法に基づく3つの基準(注1)全てを引き続き満たしていると指摘するとともに、台湾も新たにこれら3つの基準を満たしたと指摘した。しかし、これら3カ国・地域に関して「為替レートを操作していることを発見するのに十分な証拠がない」として、「為替操作国・地域」認定を見送った。スイス、ベトナムについては既に行われている問題解決に向けた2国間協議を続けるととともに、台湾とも協議を行っていくと結論付けた。その他、為替操作「監視対象」国として、前回の報告から引き続き、日本と中国、韓国、ドイツ、イタリア、インド、マレーシア、シンガポール、タイを指定したほか、アイルランド、メキシコも今回新たに対象に加え、計11カ国を指定した。

報告書の公表を受けて、台湾の中央銀行は為替政策について「秩序ある為替市場と金融市場の安定維持を目的としており、貿易上の優位性を不公正に獲得することは決して意図してはいない」として、為替取引と輸出入状況は「ほとんど関連性がない」と述べたとされる。また、米国と台湾は「技術サプライチェーン上の重要なパートナー」と述べ、今後の協調を示唆した(ロイター4月18日)。

今回の報告書で日本については、2019年の円レートはファンダメンタルに沿っており、2011年以降は為替介入も行っていないなどとして一定の評価を与えた。他方で「為替介入は適切な事前協議を伴う非常に例外的な状況」に限定されるべきとし、前回報告書と同様に、生産性の向上などを通じて潜在成長力を促進し、自国通貨高に向けた構造改革を行うべきとしている。

中国については、米国に対する貿易黒字は2018年の4,190億ドルをピークに、2020年には3,110億ドルまで縮小しているものの、2国間の貿易黒字国としては依然として群を抜いて最大であることを指摘した。また、為替レート管理や中央銀行と国有銀行の関係や為替行動などについて非常に不透明として、前回報告書と同様に、中国の為替介入行動の透明性を改善する必要性を指摘している。

(注1)米国との物品貿易の輸出入総額が400億ドルを超える国・地域を対象に、(1)大幅な対米貿易黒字(物品の貿易黒字額が年間200億ドル以上)、(2)実質的な経常収支黒字(GDP比2%以上)、(3)持続的で一方的な為替介入(介入総額がGDP比2%以上かつ過去12カ月間のうち6カ月以上の介入)という3つの基準が設定されている。

(注2)「監視対象」に一度挙げられた国・地域は、少なくとも向こう2回分の報告書で対象国・地域として取り上げられ、(注1)の3つの基準で改善が一時的でなく永続的なものになっているかどうかについて評価される。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 573cd5d097f0ef41