米州サミットがロサンゼルスで開催、バイデン米大統領が首脳外交展開

(北米、中南米)

ロサンゼルス発

2022年06月14日

第9回米州首脳会議が6月6~10日、米国ロサンゼルスで開催された。ジョー・バイデン米大統領はカナダと中南米21カ国(注1)の首脳と会談し、経済連盟や移民問題、気候変動対策などについて議論した。

バイデン大統領は首脳会議を通じて、北米と中南米諸国との経済連携を強化する意向を表明した。6月8日に「経済繁栄のための米州パートナーシップ構想(APEP)」を発表したほか(2022年6月10日記事参照)、6月10日には新たな国際枠組み「ロサンゼルス宣言」を発表、米州で連携して移民問題や人権保護に対処すると宣言し、カナダやメキシコを含む20カ国(注2)が同意した。米州内では治安の悪化から他国への不法入国者が後を絶たない状況が続いており、移民問題への対応は重要課題となっている。

首脳会議では、新型コロナウイルス禍からの経済回復や未来に向けたデジタル化、サプライチェーンの強化、医療システムの改善、観光やサステナビリティー(持続可能性)、気候変動やエネルギー安全保障といった議題が取り上げられた。また、各国首脳や閣僚のほか、ゼネラルモーターズやペプシコ、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、ファイザーなどの民間企業の代表者を交えた「米州CEOサミット」が米商工会議所の主催により開催され、国境をまたぐこれらの課題に対し、民間セクターがどのように関わっていくべきかといった議論がなされた。

米州地域での優先課題としては、気候変動対策が挙げられる。ジョン・ケリー米大統領特使(気候問題担当)は同地域の脱炭素化について、「欧州と比べて規制が少なく、経済の成熟度が低いものの、より経済的な機会が大きい」とした上で、「民間企業が(脱炭素化に)必要な製品や技術、プロセスを率先して作り出すことで、初めて実現できる」と述べ、民間ビジネスの積極的な関与を求めた。

州知事や市長も各国首脳と会談

ロサンゼルス市のエリック・ガルセッティ市長は6月7日、首脳会談に参加したチリのガブリエル・ボリッチ大統領と対面で会談し、気候変動によって生じている水供給の課題にについて、レジリエンス(回復力)を高める協力を行う覚書に署名をしたと発表した。

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)も8日に「カリフォルニア気候コミットメント」を発表し、有害なメタンの漏出を検出して世界のメタン排出の最大40%を追跡する衛星ネットワークの立ち上げに1億ドル、メタンガス漏出の危険がある遊休油井をふさぐために2億ドルを投じるとしている。9日にはカナダのトルドー首相との間で、排出量削減や環境保護、ゼロエミッション車(ZEV、注3)、気候適応、循環型経済に関する協力覚書(MOU)を交わした。同州は既に日本や中国のほか、ニュージーランドと同様の協力覚書を締結しており(2022年6月3日記事参照)、今回で4カ国目となる。

(注1)アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ国、ドミニカ共和国、エクアドル、ガイアナ、ハイチ、ジャマイカ、パナマ、パラグアイ、ペルー、セントルシア、スリナム、トリニダード・トバゴ。

(注2)米国、カナダ、アルゼンチン、バルバドス、ベリーズ、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、 グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、パナマ、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ。なお、メキシコをはじめとする一部の国々の首脳が米州首脳会議への不参加を表明していたことから、首脳会議への参加国数とロサンゼルス宣言への合意国数には乖離がみられる。

(注3)温室効果ガスを排出しない自動車を指す。

(サチエ・ヴァメーレン)

(北米、中南米)

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