カーボンニュートラル達成を法律に規定、政権をまたいで実現

(チリ)

サンティアゴ発

2022年06月20日

チリ環境省は6月13日付の官報公示をもって、気候変動枠組みに関する法が施行したと発表した。同法は、チリが従来掲げてきた2050年までのカーボンニュートラル(注1)達成という政府目標が国内法の条文によって規定されたという点で注目を集めている。さらに、目標達成のために5年ごとに環境省の主導で行われる中間評価プロセス、州やコムーナ(注2)といった行政区画ごとの役割と義務、温室効果ガス排出などに関する「国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution)」についても規定されている。法律の施行に先立ち、6月5日の世界環境デーに合わせて行われた記念式典には、マイサ・ロハス環境相とともに、ガブリエル・ボリッチ大統領も出席し、同法の重要性について言及した。

ボリッチ大統領が率いる現政権の運営については、セバスティアン・ピニェラ前政権との相違点が注目を集めることが多い中、同法施行に関しては、前政権からの遺産を現政権が引き継いだかたちとなった。2019年12月にスペインのマドリードで開催された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)の場で、当時のカロリナ・シュミット環境相が政府による同法案提出について発表し(2019年12月12日記事参照)、2年超にわたる議会審議を経て成立、施行に至った。

チリでは、干ばつによる水不足や都市部の大気汚染、地震をはじめとする自然災害の脅威などの気候変動に対する弱さが問題視されている。国内の産業にも悪影響をもたらしていることから、気候変動問題への積極的な取り組みは、長きにわたって政府の優先課題として位置づけられている。

(注1)二酸化炭素(CO2)の排出と吸収がプラスマイナスゼロに保たれ、大気中のCO2増減に影響を与えない状態を指す。

(注2)州よりも細分化された地方行政の基本単位。

(佐藤竣平)

(チリ)

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