チリ政府、カーボンニュートラル実現へ向けた積極的な取り組み

(チリ)

サンティアゴ発

2019年12月12日

チリのフアン・カルロス・ジョベト・エネルギー相は12月9日、スペインの首都マドリードで開催されている国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)において、チリにおける石炭火力発電所の閉鎖と、その代替となる再生可能エネルギーの導入を当初の計画より一部早めると発表した。閉鎖へ向けたスケジュールが早まったのは、エンジー(Engie)、エーイーエスヘネル(AES Gener)などが手掛ける計4カ所の石炭火力発電所(表参照)で、発電能力の合計は約700メガワットに及ぶ。ジョベト・エネルギー相は、これらの発電所により賄われている電力が再生可能エネルギーに置き換わることで、より安価でクリーンなエネルギーの共有が可能になると発言しており、チリ政府は今後、閉鎖の実現へ向けて必要となる手続きに取りかかる予定だ。

表 閉鎖スケジュールの変更が発表された石炭火力発電所

ジョベト・エネルギー相の発言に呼応するかたちで、カロリナ・シュミット環境相から、チリ政府が気候変動への取り組みに係る新たな法案を議会に提出予定の旨が発表された。12月18日付で提出が予定されている同法案は、今後のチリにおける持続可能な開発への取り組みを促進するもので、その目標として2050年までのカーボンニュートラル(注)の達成が盛り込まれる予定となっている。シュミット環境相は、法案が実現すれば、チリはカーボンニュートラルに関する目標を国法の中に取り込んだ最初の国となるだろうとコメントしている。

チリでは、以前から国の政策として、2040年までに国内の石炭火力発電所を全面的に閉鎖し、2050年までに国内総発電量の70%以上を再生可能エネルギーにより賄うことが掲げられていた(2019年9月17日記事参照)が、依然として石炭火力発電は国全体の発電量の約4割を占めている。10月上旬からの反政府デモの影響により、COP25の開催地をマドリードに委ねる格好となったが、同会議の議長国として引き続き存在感を示している。

(注)二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロに保たれ、大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない状態を指す。

(佐藤竣平)

(チリ)

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