米ハイゾン・モーターズとシュルンベルジェ、水素燃料電池活用で連携

(米国)

ヒューストン発

2022年06月28日

米国水素燃料電池商用車メーカーのハイゾン・モーターズ(本社:ニューヨーク州ロチェスター)は6月23日、米国石油サービス大手シュルンベルジェ(本社:テキサス州ヒューストン)と水素燃料電池を動力源とした石油・ガス掘削の実用化に向けた共同開発契約を締結すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

両社は同契約の下、ハイゾンの有する大型商用車用の高出力水素燃料電池システムの設計と製造に関する知見を活用して、温室効果ガス(GHG)を排出しないゼロエミッションの水素燃料電池パワーモジュールを開発する。早ければ2022年第4四半期(10~12月)に北米の石油・ガス井の陸上掘削装置(リグ)の動力源として実証した上で、世界各地の石油・ガス井の現場作業での活用を視野に入れるとしている。発表によると、シュルンベルジェは具体的に水素燃料電池を動力源とした石油・ガス掘削の商業化もにらみ、カナダの石油・ガス掘削サービス企業のエンサイン・エナジー・サービシズとの間で、エンサインの掘削作業に水素燃料電池システムを組み込むための覚書を締結したとしている。

ハイゾンによると、水素燃料電池を動力源とする掘削装置は日量最大2.5トンの水素を消費すると予想され、炭素強度(注)ゼロの水素を燃料とすることから、現在、石油・ガス掘削装置に搭載されているディーゼル発電機と比較して、年間1万トンの二酸化炭素(CO2)排出削減が可能になるとしている。

また、発表では、環境負荷低減に加えた利点として、水素燃料電池システムの導入によって発電機特有の騒音や振動、メンテナンスが不要になることを挙げ、これにより、騒音や排気ガスのために現在掘削作業が制限されている地域での開発が期待される。シュルンベルジェの掘削装置プロダクト担当マネジャーのブライアン・ウィンター氏は「増え続ける世界のエネルギー需要を満たしながら低炭素の未来を築くには、これまでにないような利害関係者への説明責任と業務効率、有望なテクノロジーへの早期投資が必要となる」「シェルンベルジェはハイゾンの先進的水素燃料電池システムにより掘削作業を脱炭素化できることに興奮している」と述べた。

シュルンベルジェは、石油・ガス開発の生産性向上や脱炭素化に取り組んでおり、2022年4月4日には、英国シンテラと幅広い産業市場をターゲットとした新たな光ファイバーセンシングソリューションを共同開発する契約を締結したことを発表した(2022年4月8日記事参照)。また、6月10日には、ルクセンブルクの海洋エンジニアリング大手サブシー7と、両社が共同で海底での石油ガス開発を実施するための「海底統合アライアンス」を7年間更新する契約を締結したと発表した(2022年6月13日記事参照)。

(注)エネルギー単位当たりのCO2排出量、すなわちCO2排出原単位を示す。炭素集約度とも呼ばれている。

(沖本憲司)

(米国)

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