FRB保有資産は2025年半ばまでに2兆5,000億ドル縮小の見通し、NY連銀

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月01日

米国のニューヨーク連邦準備銀行(NY連銀)は5月24日、公開市場操作に関する年次報告書(2021年)を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。現行の金融政策の下で、連邦準備制度理事会(FRB)の保有資産は2025年半ばに2022年比で2兆5,000億ドル縮小するとの見通しを示した。新型コロナウイルス禍の中の金融緩和で、FRBの保有資産は約9兆ドルに達しているが、3年で3割弱が縮小する計算となる。

NY連銀はFRBの下部組織で、全米に12行ある連邦準備銀行の1つ。金融の中心地であるニューヨーク地区を管轄していることから、FRBの金融政策について、実際の公開市場操作の大部分を担い、NY連銀総裁(現在はジョン・ウィリアムズ総裁)は連邦公開市場委員会(FOMC)の副議長も兼務するなど、他の11行よりも相対的に重要な役割を担っているとされる。

前回FOMCでは政策金利0.5ポイント引き上げに加え、保有資産について、6月から月475億ドル〔米国債300億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)175億ドル〕、9月からは米国債、MBSともに倍の950億ドルの縮小を決定している(2022年5月6日記事参照)。報告書では、こうした金融政策の変更によってFRBの資産ポートフォリオがどのように変化し、財務に今後どういった影響を与え得るかを試算している。試算では、2024年までの資産縮小額は平均で月800億ドルと予想、その後は縮小ペースが鈍化するものの、2025年半ばには保有資産残高は現時点の約9兆ドルから2兆5,000億ドル減少するとした。2026年以降、保有資産額は経済成長に伴って再び増加するが、GDP比では22%を維持するとしている(添付資料図1、2参照)。

報告書では、こうした資産縮小が金利に与える影響は試算されていないが、FRB自身の調査では、新型コロナ禍で約4兆ドルから約9兆ドルまで資産拡大させた過程で、長期金利は最大1.0ポイント低下したとしており、今回の縮小時にはこれらと逆の押し上げ効果が相当程度あると予想される。ただし、実際には金利はその時点の市場の需給要因によって決まることから、ジェローム・パウエルFRB議長も「(金利への影響は)実際には誰にもわからない」と述べている。

前回の資産縮小は2017年10月から2019年7月の約2年間、金額は約6,400億ドルだったが、NY連銀の試算どおりだと、今回は2022年から2025年の約3年間、金額も2兆5,000億ドルと、かつてない長期間かつ金額の資産縮小となる。既に市場はこうした縮小インパクトに敏感に反応しており、住宅市場では住宅ローン固定金利が急上昇し、直近の住宅販売は急激に落ち込むなど顕著な動きが見られる。長引く物価高などを背景に、一部小売り企業の直近決算では軟調な結果が示されるなど(2022年5月26日記事参照)、景気の後退懸念もくすぶる中、6月から開始される資産縮小含め、FRBの今後の金融政策の舵取りに注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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