「西側」に代わる国々との関係構築に腐心、SPIEF2022で

(ロシア、エジプト、イラン、アラブ首長国連邦)

欧州ロシアCIS課

2022年06月21日

「ロシア版ダボス会議」とも呼ばれる国内最大級の国際イベント、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(以下、SPIEF)が6月15~18日に開催された。25周年という節目の年だったが、米国やフランスなどの一部の外国経済団体を除き、常連の欧米勢が参加を見合わせたことから、例年に比べ盛り上がりに欠いた。

写真 サンクトペテルブルク市内に掲げられたフォーラムののぼり旗(ジェトロ撮影)

サンクトペテルブルク市内に掲げられたフォーラムののぼり旗(ジェトロ撮影)

フォーラム全体を見渡すと、西側諸国の代わりに、ロシアにとってビジネスパートナーとなり得る国々との関係構築を志向するプログラムが目立った。

例えば、中東諸国との対話。フォーラム史上初の開催となったエジプトとロシアの2国間対話(6月16日)では、エジプト側はロシア企業に対し、スエズ運河経済特区への入居を訴えた。エジプトは今回ゲスト国として参加し、ロシアのプーチン大統領が出席した17日のプレナリーセッションでは、アブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領がビデオメッセージを送っていた。このほかフォーラム期間中に、エジプト国内でロシア独自の決済カードシステム「ミール」を受け入れるために具体的な準備が進行していることが明らかになった(「レンタ・ルー」6月16日)。ロシア人にとってエジプトは最も人気のある旅行先の1つだが、米国クレジットカード大手のビザとマスターカードがロシアでのカード決済事業を停止したことで、国内発行のビザやマスターカードがロシア外で利用できなくなったことから(2022年3月3日記事参照)、同カードの保有者は国外旅行が難しくなった。エジプトは、自国内でミールを使えるようにすることでロシア人旅行者を呼び込みたい考えだ。

6月16日の「ロシアとイラン」セッションでは、イランのアリレザ・ペイマン-パク産業・鉱業・貿易副大臣から、ユーラシア経済連合(EAEU)との間での2022年中をめどとした自由貿易圏創設の構想が披露された。同日には、ロシア国営天然ガス企業ガスプロム傘下のガスプロムメディアとイラン政府が、両国で初となる映画の共同制作の計画を明らかにするなど、両国の接近ぶりが目立った。このほか、2023年のSPIEFのゲスト国がアラブ首長国連邦(UAE)に決まり、16日にUAEのオマル・ビン・スルターン・アール・オラマ人工知能・デジタル経済・テレワーク担当国務相とフォーラム主催者との間で署名式が行われた。

【欧州ロシアCIS課】

(ロシア、エジプト、イラン、アラブ首長国連邦)

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