米エネルギー省、石油戦略備蓄から4,500万バレル売却、大統領は石油会社に増産要請

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月17日

米国エネルギー省は6月14日、石油戦略備蓄から4,500万バレルの売却を行うことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。3月に発表した石油戦略備蓄から半年間で1億8,000万バレルを放出する計画(2022年4月1日記事参照)の一環で、市場への売却は今回で4回目、規模は過去最大となる。

これまでの販売を通じて、約4,000万バレルがエクソンモービルやシェブロンなどの石油会社に売却されており、今回(販売期間:8月16日~9月30日)も、これまでと同じく大手石油会社を中心に売却が進むとみられる。累次の売却により、予定量の1億8,000万バレルのうち約半分が売却されることになるが、残り半分は8月から10月にかけて売却する予定となっている。ガソリンの全米平均価格は1バレル(約3.8リットル)当たり5ドルを超え、1年前の約3ドルから約1.7倍の水準にあり、特に中低所得層の家計を強く圧迫している。11月の中間選挙が迫る中、今回の売却はガソリン価格を少しでも抑制したいというバイデン政権の意図があるとみられる。

また、ジョー・バイデン大統領は6月15日、エクソンモービルなど石油大手7社に書簡を送付し、石油の生産と供給を即時に増やすよう要請した(2022年6月16日記事参照)。バイデン大統領は同書簡の中で、最近のガソリン価格の上昇は「プーチン(ロシア大統領)の戦争が主因」としながらも、石油会社がこれに乗じて通常より多くの利益を得ることは「米国民に受け入れられない」と非難している。バイデン大統領は7月に原油生産国サウジアラビアなど中東諸国を訪問する予定で、ガソリン価格を抑制するために、OPECプラスの原油増産などが議題になるとみられる(2022年6月15日記事参照)。

米国議会では、石油大手の売上高の10%を超える利潤に付加税を課す法案の提出が計画されており(ロイター6月14日)、石油会社に対する批判は強い。エネルギー省エネルギー情報局によると、米国内の稼働可能な製油所の能力は2019年末よりも日量約90万バレル少なく、ガソリン価格の高騰にもかかわらず、石油の生産量はそれほど増えていない。石油会社が積極的な増産に動かない背景には、新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに閉鎖した製油所の増加といった供給制約のほか、長期的な脱炭素化の流れなどがあるとみられ、中間選挙を前にバイデン政権と石油各社の駆け引きはしばらく続きそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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