米FRB、デジタルドル発行の場合に短期金利上昇の可能性指摘

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月10日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は5月31日、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)が金融政策に与える影響をまとめた論文を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、その中で、CBDC発行によって短期金利が上昇する可能性を指摘した。

FRBは2022年1月に「デジタルドル」発行に関して、利点とリスクをまとめた報告書を発表しているが(2022年1月26日記事参照)、今回の論文ではより具体的に、デジタルドル発行によって米国の中央銀行、市中銀行、家計のそれぞれのバランスシートがどう変化するかなど、金融政策への影響を考察している。今回の論文はディスカッションペーパーの位置づけとして、FRB理事など全ての者の同意を示すものではないとしている。

論文で示した金利上昇のメカニズムは以下のとおりだ。まず、FRBがデジタルドルを発行し、家計は銀行預金を使ってデジタルドルを購入・換金する。銀行は預金減少に伴ってFRBへの預金準備金を減少させるが、準備金を減らした分、証券や預金商品の販売などで現金を増やす行動に出ることとなる。これが銀行間の競争激化を促し、市場の短期金利は上昇することになるとして、FRBは公開市場操作や国債購入など市場にマネーを供給することなどで短期金利上昇を抑え込むことになる可能性を指摘した。なお、論文では、CBDCは無利子、CBDC利用は家計などのみで金融機関は利用しない、また市中銀行は大量のCBDCを保有してはいないといった仮定を置いている。

CBDC発行に関する議論・試験プロジェクトは世界的に拡大している。国際決済銀行(BIS)が2022年5月6日に発表した、世界の81の中央銀行を対象とした調査結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、9割以上がCBDCについて検討中、またCBDCを開発または試験プロジェクトを実施しているのは26%となり、2021年の同調査からほぼ倍増している。しかし、2022年1月のFRBの報告書も指摘しているとおり、プライバシー保護などの課題も多くあり、特にCBDCと親和性が高い民間デジタルマネーの規制をどのようにするかという点と密接に関連してくる。ニューヨーク連邦準備銀行が主催したデジタル通貨についてのシンポジウムでは、米国で流通が拡大している暗号資産の中には信用創造を伴うものがあり、リスクが広がっている可能性が指摘され、ロリー・ローガン副総裁は「(デジタル通貨が)どのように進化するかは不確実だ。これらの影響は革命的かもしれないし、漸進的であるかもしれない」と述べて、中央銀行自身も見通しが不透明であることを示唆している(ロイター6月2日)。デジタルドル発行の議論とともに、民間デジタルマネーとのすみ分けやその規制の方向性の議論にも併せて留意が必要だ。

(宮野慶太)

(米国)

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