米NY市マンハッタン、5月賃料中央値は過去最高の3,942ドル、低所得者向けアパートも値上げへ

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月27日

米国住宅仲介会社のダグラス・エリマンとミラー・サミュエルが6月10日に発表したレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、ニューヨーク(NY)市マンハッタン地域の5月の賃料中央値は月額3,942ドルとなり、前月(2022年5月20日記事参照)に続いて4カ月連続で過去最高を更新したことが明らかになった。

調査対象はマンハッタン地域の賃貸アパートやコンドミニアムなどで、中央値は前月比で1.9%上昇、前年同月比では29.8%上昇した。前月よりは伸びは鈍化(それぞれ6.2%、38.7%)したものの、引き続き高い伸びが続いている。連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めにより(2022年6月16日記事参照)、30年固定住宅ローン金利は6月23日時点で5.8%と、前年同時期の3%から2倍近い水準に達している。金利負担が重くなることから、住宅ローン申請件数は顕著に減少しているが、材料費高などを背景に住宅価格はいまだ上昇している。商務省が6月24日に発表した5月の新築住宅平均価格は、前年同月比で15%上昇している。賃料はこうした不動産価格にタイムラグを伴って連動することから、現在の賃料上昇基調はまだしばらく続く可能性がある。

こうした中、NY市の賃貸住宅管理委員会は6月21日、低所得者向けの賃貸住宅である家賃安定アパートについて、1年賃貸で3.5%、2年賃貸で5%の賃料値上げの許容を決定した。引き上げ幅は最近では2013年の1年賃貸4%、2年賃貸7.75%に次ぐ大きさで(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版6月21日)、2022年10月1日から引き上げ可能となる。NY市によると、市内に約364万戸の住宅があるが、家賃安定アパートは約101万戸あり、入居者の平均年収は4万7,000ドルと、当該アパート以外の入居者の年収6万2,960ドルと比べて低い傾向にある。6月14日には低所得者向けの住宅建設計画を発表し(2022年6月22日記事参照)、低所得者への住宅支援を鮮明にしたエリック・アダムス市長だが、今回の決定に際し「委員会の決定は残念だ」としながらも、「何年も賃料を上げられない中、家主は破産の危機に瀕している。これは賃借人の生活にも直結する」と述べ、家主の管理コスト負担上昇の現状に理解を示した。

住宅費は家計の約3割を占め、低所得者層では相対的にその負担が重くなりがちだ。仮に家賃が支払えず、ホームレスが増加すれば、治安悪化が懸念される。マンハッタンのオフィス復帰を阻む要因の第1に挙げられるのが治安悪化だ(2022年5月13日記事参照)。NY市の賃料上昇が治安やオフィス復帰に今後どのような影響を及ぼすのか注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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