欧州ICT業界、今後のタクソノミー基準制定にデジタル技術への考慮求める

(EU)

ブリュッセル発

2022年06月06日

欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体デジタルヨーロッパは6月2日、欧州委員会が2022年内の採択を目指すEUタクソノミー規則に関連する委任規則についての提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2020年7月に施行されたタクソノミー規則では、持続可能な経済活動の目的として6つの活動類型を定め(2020年6月30日記事参照)、そのうち「気候変動の緩和」と「気候変動への適応」については、タクソノミーに合致する企業活動を明示する委任規則が2022年1月から適用されている(2021年4月22日記事参照)。欧州委は、諮問機関のサステナブル・ファイナンス・プラットフォーム(以下、PSF)が2022年3月に提出した報告書などに基づき、2022年内に残る4つの活動類型(「水・海洋資源の持続可能な利用と保護」「循環型経済への移行」「汚染の予防と管理」「生物多様性とエコシステムの保護・再生」)について、同様の委任規則案を採択する予定だ。

デジタルヨーロッパは、最初の委任規則やPSFの報告書ではデジタル技術への言及が少なかったのは残念だとして、欧州委に対して、これから採択する委任規則案ではデジタル技術、電気・電子機器がタクソノミーの環境目標の実現を促し、実質的な貢献を果たすことを認め、タクソノミーをグリーン化、デジタル化双方のEU目標に十分に整合させることを求めた。このほか、(1)循環型経済への移行に関連する規制などとの整合性を持たせる、(2)現行EU法令の見直し案などに基づいてタクソノミー規則における技術スクリーニング基準(TSC、注)を策定しない、(3)画一的なTSCをさまざまな電気・電子機器に適用しない、(4)製品修理や廃品の再製品化といった既存の循環型ビジネスモデルをより考慮に入れること、を提案した。

多様な製品特性や循環型ビジネスモデルを考慮に入れるべきだと主張

デジタルヨーロッパは、電気・電子機器製品のライフサイクルの過程における環境への影響や、リサイクルできる部品・スペア部品の有無は製品によって大きく異なり、単一のTSCを適用することは製品の特性を無視するものだと主張。ICT部門では、EUエコラベルはまだ限定的だが、国際標準化機構(ISO)のタイプ1エコラベル(第三者認証によるエコラベル)は、よりグリーンな製品の生産や消費につながってきたと指摘。PSFの報告書ではEUエコラベルやEUのグリーン調達基準が採用され、タイプ1エコラベルに該当する製品すべてを公正に扱っていないと不満を示した。

さらに、デジタルヨーロッパは、PSFの報告書では製品修理や改修に係る企業間取引、持続可能な電気・電子機器製造や製品のアップグレードが考慮されていないと指摘。多くの循環型ビジネスはモデルとして新しいもので、今後、開発されるビジネスモデルもある中、PSFがタクソノミーに合致するとした経済活動の範囲は非常に限定的だとした。製品のアフターサービス、機能のアップデートや製品シェアリング・サービスといった既存または新興のビジネスモデルも委任規則案において対象とすべきだと提言した。

(注)企業活動がタクソノミーに合致した持続可能なものに該当するための要件。

(滝澤祥子)

(EU)

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