中国政府機関がIPEFへの見解を相次いで発表

(中国、米国、日本、韓国、ASEAN、インド、ニュージーランド、オーストラリア)

北京発

2022年06月01日

中国商務部は5月24日の記者会見で、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」についての質問に対し、「アジア太平洋地域の経済は開放と協力、互恵的でウィンウィンの関係であることにより利益を得てきたと認識している。(この地域に)関連するイニシアチブは、この地域の繁栄と発展に貢献する力となり、開放的で包摂性を持つべきであり、差別的・排他的なものであってはならない。また、経済協力と団結を促進するべきで、現行のメカニズムを損ない分裂させるものであってはならない」と懸念を表した。その上で「中国は一貫してこの基準を満たす地域経済協力イニシアチブに対してはオープンな態度を維持してきた」と中国側の認識を述べた。

中国外交部の汪文斌報道官は5日23日の記者会見で、王毅国務委員兼外交部長(外相)の発言(2022年5月24日記事参照)を元に、IPEFについて「中国は地域内の他の国々と同様、地域経済の強化に資するイニシアチブは歓迎するが、分断と対立を作り出す企てには反対だ」とし「米国は、別の枠組みを作って現行の地域協力枠組みに打撃を与え、地域統合に逆行するのではなく、自由貿易のルールにしっかりと従って行動すべきだ」と批判した。また、「米国は経済問題を政治化、武器化、イデオロギー化し、経済的手段を利用して、地域の国々に中国と米国のどちらの陣営につくか迫っているのではないか」とし、「アジア太平洋地域は地政学の決闘場ではなく、平和的発展の拠点となるべきであり、アジア太平洋の陣営化、NATO化、冷戦化を企てるさまざまな陰謀がその目的を達成することはできない」との見解を示した。

汪報道官は5月25日の記者会見では、米国が「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定」交渉を離脱し、「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」にも参加していないことなどを挙げ「米国は自身の利益のためにIPEFを立ち上げたにすぎない」と批判した。その上でIPEFは「米国の戦略地政学の推進にも奉仕するもの」であるとして、米国主導の貿易ルールを制定し、産業チェーンを組み替えて地域の国々と中国経済をデカップリングさせようとする企みだとの見方を示した。その他、IPEFは関税引き下げ・撤廃が対象外であることなどから、各国に米国の「ハイレベル」な基準を受け入れさせるだけだとして、「他の参加国に何の利益があるのか」と疑問を呈した。

(河野円洋)

(中国、米国、日本、韓国、ASEAN、インド、ニュージーランド、オーストラリア)

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