南部の緊急事態宣言延長を国会で可決、15日間の延長

(チリ)

サンティアゴ発

2022年06月17日

チリ国会は6月14日、政府が提出した同月15日までが期限となっていたチリ南部地域に発令している緊急事態宣言の延長について、下院(賛成126、反対7、欠席9)と上院(賛成39、反対1、欠席2)が可決して承認した。

同宣言は、南部の治安悪化を受けて、ガブリエル・ボリッチ大統領が5月17日に発令し(2022年5月19日記事参照)、大統領の権限で1度の延長を行い、2度目以降の延長については国会承認を必要としていたもの。

内務省の発表によると、同地域への緊急事態宣言を発令する前の20日間と発令後の20日間を比較すると、機械類や車両への放火が80%減、建物への放火が53%減、主要道路での犯罪行為が55%減少したと発表している。イスキア・シチェス内相は、政府が同地域の問題の実質的な解決策を提供することを約束するとコメントし、先住民族との関係改善を図るための政策を推進していくことを国会で強調している。

与党内では意見割れる

下院での投票では、野党を含む多くの議員が賛成票を投じたものの、現政権を構成する左派連合の議員の中には反対票を投じた議員もいた。ボリッチ政権はもともと、南部の先住民族との対立の解決に軍や警察などの国家権力を派遣することに反対していたためだ。セバスティアン・ピニェラ前政権時に緊急事態宣言の発令や延長に反対していた現与党の議員らにとっては、当時とは真逆の対応をとることに矛盾が生じており、今回の投票を通じて、政府と与党連合の関係性が決して一枚岩ではない状況が浮き彫りとなった。

(岡戸美澪)

(チリ)

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