治安悪化でチリ南部に緊急事態宣言を発令

(チリ)

サンティアゴ発

2022年05月19日

チリ政府は、5月17日付の官報公示により、チリ南部アラウカニア州全域とビオビオ州のビオビオ地域とアラウコ地域に対し、緊急事態宣言(Estado de Excepción Constitucional de Emergencia)を発令した。

同宣言は、公序良俗に深刻な混乱がみられる場合や、国家の安全が危険にさらされている場合に大統領が発令できる宣言で、必要ならば地域住民の移動や集会の自由を制限する外出禁止令の発令が可能となる。今回の発令は、影響を受ける地域住民の日常生活への影響を最小限に抑えることを目的とし、対象地域の主要道路の自由な通過と安全を確保することに焦点を当てている。発令期間は15日間で、1回の延長が可能。2回目以降の延長については、国会での承認が必要となる。

同宣言を発令するに至った経緯には、南部地域の治安悪化がある。ガブリエル・ボリッチ大統領は、長きにわたりチリが抱える南部の先住民族との対立を解決するための足掛かりとして、前のセバスティアン・ピニェラ政権時に発令されていた緊急事態宣言を延長しない決定を下した。しかし、同宣言の解除後、域内で先住民族の過激派組織による犯罪行為が急増した(2022年5月2日記事参照)。

政府はあくまでも、緊急事態宣言を発令するのではなく、対象地域の警備強化によって事態を収拾しようと試みた。加えて政府は、緊急事態宣言までには至らないものの、南部の主要道路を軍によって統制するための措置を新たに導入すべく、憲法改正を伴う法案提出を目指し、調整を行っていた。しかし、必要な賛成票が与党連合内でも得られず、法案送付を見送った。その結果として、緊急事態宣言を発令するに至り、当初の政府の方針とは真逆の対策を講じることとなった。

政府は、今回の緊急事態宣言の発表とともに、先住民族への政府のコミットメントとして「良き暮らしの計画(Plan Buen Vivir)」を発表した。本計画は、「先住民族の認識」と「領土議会の発足と生活の質の改善」の2点を主軸としている。具体的な施策としては、先住民開発公社(CONADI)への予算を倍増させ、先住民族への返還を目的に土地購入を促進すること、先住民省の創設法案の提出、対話の場を設けるための領土議会の発足、公共投資による先住民族の生活の質の改善が挙げられている。これらの推進により、政府との関係改善を図る。

(岡戸美澪)

(チリ)

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