米司法長官がウクライナ訪問、戦争犯罪者追及の専門チーム立ち上げへ

(米国、ロシア、ウクライナ)

米州課

2022年06月22日

米国のメリック・ガーランド司法長官は6月21日にウクライナを訪問し、同国のイリーナ・ベネディクトワ検事総長と会談した。

司法省のリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、ガーランド長官は、民主主義を守り、法の支配を支持するウクライナ国民の努力を称賛した上で、同国で戦争犯罪やその他の残虐行為に関与した人物を特定、逮捕、起訴することを助ける米国の追加的な行動を明らかにした。具体的には、これらの人物に責任を負わせることを追及する取り組みを一元化・強化するため、省内に専門チームを立ち上げる。専門チームには、刑事訴追や証拠の収集、法医学、その他法的分析に精通した省内の専門家を集め、ウクライナでロシアの攻撃を取材していた米国人記者の殺害など、米国の管轄権が及ぶ現在進行中の調査にも重要な役割を果たすことになるとしている。

また、司法省は、ロシアが違法に資金を調達し、制裁を回避しているとして、クレプトクラシー(注)や汚職、資金洗浄に詳しい検察官をウクライナに派遣する。同省は2022年3月2日に、米国とパートナー国が科した対ロシア制裁の執行に当たる「クレプトキャプチャー」と呼ばれる省庁横断のタスクフォースを立ち上げ(2022年3月4日記事参照)、制裁対象者のヨット押収やロシアの犯罪ネットワーク解体、制裁違反の取り締まり強化などに当たってきた。3月17日に米国や日本を含む多国間で立ち上げた「ロシアのエリート層・近親者・富豪(REPO)タスクフォース」でも、ガーランド司法長官とジャネット・イエレン財務長官が共同で米国の代表を務めており、省内のリソースを投入している(2022年3月18日記事参照)。

今回の司法省の専門チーム立ち上げなどの取り組みは、ウクライナに対してより直接的な支援を提供することになるとみられる。司法省は6月21日、ガーランド司法長官とベネディクトワ検事総長がともに記者の取材に応じた際の動画をツイッターに投稿し、ガーランド長官はこの中で「私は、ウクライナ国民に対する米国民の揺るぎない支援を表明する。米国は『隠れることはできない』という明白なメッセージを送っている。われわれとパートナー国は今回の悲劇の責任を負う人々に対し、できることは全て追及していく」と語っている。

(注)少数の権力者が国家の資金を横領して私腹を肥やす政治体制。

(片岡一生)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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