2021年第4四半期GDPは前期比0.02%増と低迷、ビジネス支援サービス業の後退響く
(メキシコ)
メキシコ発
2022年03月01日
メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)は2月25日、2021年第4四半期(10~12月)の産業分野別実質GDP成長率の確定値を発表した。前年同期比(添付資料表1参照)は速報値の1.0%から1.1%へ、前期比(季節調整済み、添付資料表2参照)はマイナス0.08%から0.02%へと、それぞれ0.1ポイント上方修正された。2021年通年では、4.8%と速報値から変わらなかった。改定値の発表により、第4四半期の季節調整済み前期比がプラスに転じたことで、テクニカルリセッション(注)は回避できたが、通年の4.8%は連邦政府、中央銀行、民間部門の予想値のいずれも下回る数値で、経済の回復が期待された水準には達しなかったことに変わりない。
成長率を産業別にみると、2021年第4四半期のGDP総額の63.5%を占めるサービス産業は、前年同期比0.2%だった。内訳をみると、「ビジネス支援」が70.3%減と、第3四半期(48.1%減)と比べてさらに大きく後退し、第4四半期のGDP全体を2.99ポイント押し下げた。「ビジネス支援」は前期比(季節調整済み)でも41.7%減と後退し、通年でも25.6%減、寄与度マイナス1.06ポイントと2021年経済の最大の低迷要因になった。その落ち込みは、人材派遣を原則禁止する連邦労働法の施行(2021年4月27日記事、2021年8月2日記事参照)と、専門サービス・工事のための人材派遣業者登録(REPSE)の義務化(2021年5月25日記事参照)をめぐる混乱により、企業向けビジネス支援サービスの提供が困難な状況に陥ったことが影響したとみられる。サービス業の主要分野としては、「卸売り」が前年同期比5.6%増、「小売り」が4.0%増と堅調で、2020年第4四半期の落ち込みを取り戻しており、前期比でみてもプラスを維持している。「金融・保険」(1.9%減)と「ビジネス支援」を除く、サービス業主要分野が全て前年同期比プラスであることから、「ビジネス支援」の激しい落ち込みは、市場に起因するものというより、連邦政府による急激な制度変更によって企業活動に支障が生じた結果とみられる。
鉱工業の成長率は前年同期比1.7%で、内訳をみると、製造業は2.2%増とプラスだったものの、そのうち自動車を含む輸送機器製造は、長引く半導体不足などの供給難が響いて9.2%減と2期連続のマイナスになっている。一方で、建設業は1.7%、鉱業も1.3%伸長した。農牧・林業・水産業は、4.7%と3期連続でプラスとなった。
専門家は2021年後半の停滞要因としてインフレ高進を指摘
英国を拠点とするシンクタンク「パンテオン・マクロエコノミクス」のラテンアメリカ経済担当チーフエコノミストであるアンドレス・アバディア氏は、サービス産業の停滞の原因として、REPSEの義務化などの影響に加え、高進するインフレ率が「消費者や企業の購買力にインパクトを与えている」とし、「テクニカルリセッションを回避できたのは、原材料価格の高騰と郷里送金のおかげで、喜んでいられる状況ではない」と指摘した(現地紙「エル・エコノミスタ」2022年2月25日)。
(注)2四半期連続での前期比マイナス成長。
(松本杏奈)
(メキシコ)
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