政府、国際商品価格の高騰による「予期せぬ所得」への課税法案を提出

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年06月27日

アルゼンチン政府は6月8日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻などを背景とした国際商品価格の高騰による「予期せぬ所得」に課税する法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を下院に提出した。アルベルト・フェルナンデス大統領とマルティン・グスマン経済相が出席して法案提出前に行った会見を受け、産業界からは反対の声が上がっている(6月6日付現地紙「クラリン」)。

法案によると、発効日の翌月1日以降に終了する会計年度の純課税所得と、前会計年度のインフレ調整後の純課税所得を比較し、増加分に対して15%の所得税を課税する。課税対象となるのは、当該会計年度のインフレ調整後の純課税所得が10億ペソ(約11億円、1ペソ=約1.1円)を超える事業者で、インフレ調整後の純利益が総所得の10%以上、あるいは前会計年度の総所得の20%以上の場合だ。「予期せぬ所得」への課税は1度限りとしている。

ウクライナでの紛争による食料やエネルギーなどの国際商品価格の高騰は、食料輸出国アルゼンチンの交易条件を改善させた一方、国内の供給不足がインフレにもつながっている。政府は3月、大豆油と大豆ミールに課す輸出税率をこれまでの31%から再び33%へ引き上げた(2022年3月28日付記事参照)。

政府は法案で「ウクライナ紛争の恩恵を受けた企業との不平等に対処するのは国家の役割であり、『予期せぬ所得』への課税はその不平等を緩和し、インフレや経済悪化の影響を受ける部門に所得を分配するための手段」と、新たな税制の必要性を訴えている。

ただ、与党連合は下院で過半数割れしているため、法案が成立するかどうかは未知数だ。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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