輸入決済に係わる規制を緩和、送金上限緩和と電信送金を新たに規定

(バングラデシュ)

ダッカ発

2022年06月28日

バングラデシュ商業省は4月24日、輸入に係わる規制や手続きを規定する「輸入政策令(Import policy)2015-2018」を改正し、新たに「輸入政策令(Import policy)2021-2024」を発表。即日発効した(添付資料の英語仮訳参照)。

同政策に関してはこれまで、輸入決済規制が日系企業にとって大きな課題の1つで、在バングラデシュ日本大使館やダッカ日本商工会、ジェトロなどが連携し、バングラデシュ政府に対し規制緩和を求めてきたという背景がある。具体的には、バングラデシュの輸入時に、政府による外貨管理などの観点から信用状(L/C)決済が原則と定められており、その手続きや決済遅延、信用状発行にかかるコスト負担(特に親子間取引の場合)がビジネスの阻害要因となっていた。他方、輸入政策令2015-2018には例外として、L/Cを開設しない決済方法(LCAF、注)も規定されていた。特に製造業に限っては、生産設備の機械や原材料の輸入に当たり、金額の上限なくLCAFにより決済可能だった。商業(製造業以外の業種)でも、年間20万ドルを上限に、LCAFによる決済が可能とされ、同決済を利用する日系企業もあった。

今回の輸入政策令2021-24では、上記の輸入決済に係わる規制を一部緩和し、製造業以外の業種によるLCAFの決済上限額を年間20万ドルから50万ドルに引き上げた。さらに、電信送金(Telegraphic Transfer Remittance:TT)を初めて明記し、政府は輸出振興を目的に、同送金を金額にかかわらず認めることができると規定したが、承認プロセスなどの詳細については記載されていない。今回の措置について、ダッカ日本商工会の河合光会頭(丸紅ダッカ支店長)は「若干であるが、一定の規制緩和がなされたことを評価したい。一方、日系企業のLCAF利用は限定的で、利用開始時には、銀行との調整に時間を要するなど容易ではない。バングラデシュの2020/2021年度(2020年7月~2021年6月)貿易総額は883億7,100万ドルに達し、この10年間で約56%も増加しており、貿易振興に向けた過渡期にあると理解している。開発途上国であるために、外貨流出抑制の規制が多いとしても、2026年に予定されている後発開発途上国(LDC)卒業(2021年12月6日記事参照)に向け、今後さらに規制緩和が進むことを強く望む」と話している。

バングラデシュでは輸入額増加の傾向が続いており、外貨準備高減少の抑止のためL/C開設に係わる規制を強化する(2022年5月30日記事参照)など、先行きが不透明な部分もあるものの、今回の措置が政府・銀行により的確に運用されることが期待される。

(注)L/Cを開設せずに行う、LCA Formと呼ばれる書面を用いた輸入決済。TT送金や手形支払い書類渡し(D/P:Documents against Payment)決済とは異なるものの、バングラデシュではそれらに比較的近い決済方法とされている。

(山田和則、安藤裕二)

(バングラデシュ)

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