カナダ政府、中国政府によるカナダ2企業の菜種輸出ライセンス取り消し解除を歓迎

(カナダ、中国)

米州課

2022年06月07日

カナダ政府は5月18日、中国政府から菜種の中国への輸出ライセンスの停止処分を受けていたカナダの穀物大手リチャードソン・インターナショナル(本社:マニトバ州ウィニペグ)とバイテラ(本社:サスカチュワン州レジャイナ)の2社について、中国政府から、ライセンスを復活させ、市場への再アクセスを認めるとの通知があったことを明らかにした。中国政府は2019年3月、カナダから出荷された菜種の種子から害虫が検出されたとして、2社からの輸入を禁止していた。

メアリー・エング国際貿易・輸出振興・中小企業・経済開発相とマリークロード・ビボー農務・農産食品相は同日、中国からの通知に関する共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて、「制限を解除し、直ちに2社を復活させ、カナダの菜種の輸出を可能にする中国の決定を歓迎する」「われわれは、カナダの菜種農家、企業、輸出業者やそのコミュニティと協力し、彼らの利益を守り、国内および中国を含む海外市場での成功を支援していく」と述べている。

カナダ国内の業界団体であるカナダ菜種評議会(Canada Canola Council、以下CCC)の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2019年3月に2社の輸出ライセンスが停止されて以降、カナダから中国への菜種の輸出は2社以外の輸出業者経由のみとなり、輸出総量はライセンス停止以前と比較して50〜70%減少している。金額ベースでは、2018年の28億カナダドル(約2,828億円、Cドル、1Cドル=約101円)から2019年には8億Cドルに落ち込んだが、2020年には14億Cドル、2021年には18億Cドルと回復傾向にある。専門家の分析によると、売り上げの損失と価格の低下により、カナダの菜種業界は15億4,000万Cドルから23億5,000万Cドルの損失を被っているとみられる。

CCCは2019年の2社の輸出ライセンス停止を受け、カナダ政府に対し、菜種の対中輸出における全輸出業者の機会平等の確保を求め、必要な全ての措置を講じるよう要請した。カナダ政府は2019年5月7日、WTOの一般理事会で同問題を提起したほか、2019年10月28日に中国との間で2国間協議を実施した。その後、協議は進展しなかったため、カナダ政府は2021年6月18日にWTO紛争解決手続きに基づきパネル設置を要請外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、7月26日にパネルが設置されていた。

カナダと中国の2国間関係については、中国の通信大手華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)のカナダ国内での拘束、その報復行為とみられる中国でのカナダ人の拘束などを巡り、近年、関係が悪化している(2021年9月28日記事参照)。そうした中、中国がカナダに対して輸入規制の緩和に踏み切ったのは、ロシアのウクライナ侵攻により、菜種をはじめとする原材料および食料価格の高騰から、中国が自国の食料安全保障の立場を再考しての動きとの見方がある(「フィナンシャル・ポスト」紙5月19日)。

なお、カナダ政府は、菜種に関する中国の市場開放を歓迎する一方で、2022年5月19日、中国の通信機器メーカーである華為技術(ファーウェイ)および中興通訊(ZTE)を、国内の高速通信規格「5G」から排除することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

(高山さわ)

(カナダ、中国)

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