イスラエルとエジプトがEUと天然ガス供給の覚書に署名

(イスラエル、エジプト、EU)

テルアビブ発

2022年06月16日

イスラエルの現地紙「グローブス」は6月15日、イスラエルとエジプトがEUと天然ガスの供給に関する覚書に署名した、と報じた。署名式は、カイロで開催された東地中海ガスフォーラム(EMGF)(注1)の会合で行われた。

同日付の「タイムズ・オブ・イスラエル」紙によると、署名式にはイスラエル訪問を終えたばかりの欧州委員会(EC)のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も出席し、カドリ・シムソンECエネルギー担当委員、イスラエルのカリン・エルハラ・エネルギー相、エジプトのターレク・エルムッラー石油相による署名に立ち会った。

今回の合意を受けて、今後、エジプトとイスラエルの海上ガス田で産出される天然ガスの欧州への輸出が、本格的に開始されることになる(注2)。エルハラ・エネルギー相は「イスラエルが世界のエネルギー市場において重要な役割を果たすこととなった」と述べて、自国産天然ガスの欧州への輸出開始が持つ意義を強調した。

東地中海ガス田(EastMed)をめぐっては、2021年1月にイスラエル政府が東地中海ガスフォーラムへの加盟を閣議決定して、域内枠組みに正式に参画した(2021年1月6日記事参照)。その後、2022年1月に米国がこれまでの方針を転換し、ガスパイプライン建設への支援を凍結(2022年1月24日記事参照)したものの、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、2022年3月にガス供給ルートについてトルコがイスラエルに接近した可能性(2022年3月14日記事参照)が報じられるなど、天然ガス供給元としての同ガス田の潜在性が再浮上してきた経緯がある。

一方で、エジプト・イスラエル産の天然ガスの輸出供給能力が欧州の総需要量に比べてそれほど大きくないため、そのインパクトは限定的とする分析(2022年5月6日記事参照)もある。ただし、ロシア産天然ガスへの依存解消を迫られた欧州にとって、代替となる調達先の1つとしての期待が、今回の署名に込められているとみられる。

(注1)EMGFは、エジプト、キプロス、ギリシャ、イスラエル、イタリア、ヨルダン、パレスチナが参加する、東地中海地域における海上天然ガス田開発のための国際的な枠組み(2021年1月6日記事参照)。

(注2)イスラエルの沖合ガス田で産出された天然ガスは、エジプトの液化プラントを経て、欧州へ輸出される。

(吉田暢)

(イスラエル、エジプト、EU)

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